阪神4位遠藤なまはげ対面 怠け者いねぞ~守備強化

雪が舞う中、白瀬矗が南極探検に使用した開南丸の前でなまはげの激励を受ける阪神・遠藤(撮影・前岡正明)

泣く子はいねがあ~、弱い子はいねがあ~。阪神ドラフト4位の東海大相模・遠藤成(じょう)内野手(18)が3日、故郷の秋田・にかほ市TDK秋田総合SCの室内練習場で自主トレを公開した。

年末年始は課題とする守備の練習に注力し、克服したいものに「弱気」を挙げた。家々の厄払いをする秋田名物「なまはげ」のように、猛練習でウイークポイントを払いのける。

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鬼のような赤く険しい顔に鋭いきば。振り乱した長い髪に、幼い頃の怖い思い出がよみがえる。でも18歳に成長した遠藤なら、秋田名物「なまはげ」と対面しても、もう大丈夫だ。「怖いから逃げていました…」と振り返るなまはげは、0歳から7歳までの間、毎年1月になると実家にやってきた。怠け者をいさめるというが、もうやって来ないよう? 年末年始の遠藤は1日休んだだけ。自分に厳しく、連日3~4時間にわたり汗を流してきた。

走攻守そろった遊撃手。高校では通算45本塁打、投げては最速145キロの二刀流として活躍した。そんな期待のルーキーが重点的に取り組んできたのは、守備強化だ。自主トレでも左右に振られながら、激しいノックを約30分間受け続けた。「守備で今日もエラーが多くて。守備の面が苦手なので、そういうところをしっかりやる」。家々を巡って厄払いするなまはげのように、猛練習で厄もエラーも払いのける。

さらに今年「払いたいもの」を聞かれると「弱気なところです」と即答した。これまでは試合でミスすると落ち込み、大声で仲間を鼓舞することが出来なかった。「気持ちの面で、切り替えることが大事だと思う」。そんな強い気持ちを持ち続ければ「泣く子はいねがあ~」と言うなまはげも来ないはず。

プロ1年目の目標は、活躍への土台作り。すでに筋肉痛になるほど、連日のトレーニングで自身を追い込んでいる。「しっかり土台作りというのを自分の中で決めているので、土台作りをしているなかで、しっかり1軍にも上がれるようなスイングを作っていきたい」。怠けず、弱音を吐かず、1軍の舞台を目指して鍛錬を積む。【磯綾乃】

○…遠藤は毎年末にTDK秋田総合SCの室内練習場で練習を行ってきた。父成人さん(47)は18年夏の甲子園で準優勝した金足農野球部出身で、社会人野球のTDKでも投手として活躍。練習のサポートを受け、遠藤は「毎年いいスタートを切るために家族みんながやってくれる」と感謝。また施設は南極探検船の実物大レプリカがある南極公園と隣接し、よく周辺をランニングしていたという。思い出深い場所でプロ1年目のスタートを切った。

◆遠藤成(えんどう・じょう)2001年(平13)9月19日生まれ、秋田県出身。東海大相模では1年春からベンチ入り。甲子園は18年春と19年夏の2度出場。昨夏の神奈川大会決勝、日大藤沢戦では横浜スタジアムのバックスクリーンに放り込んだ。甲子園初戦では近江(滋賀)打線を8回途中1失点に抑え、二刀流として活躍した。昨年のU18高校日本代表。178センチ、84キロ。右投げ左打ち。

◆なまはげ 男鹿(おが)半島を中心に秋田県で行われる年中行事。なまはげは神々の使者で、悪事を戒め、厄災を払い、無病息災や豊作・豊漁をもたらすとされる。鬼のような面をつけたなまはげが「怠け者はいねが。泣く子はいねが」など言いながら年に1度、集落、各家庭を練り歩く。地域によって異なるが大体は大みそかや1月の夜。18年11月には「男鹿のナマハゲ」がユネスコ無形文化遺産への登録が決定。18年夏の甲子園で地元の金足農が決勝進出を決めた時には、東京・中央区の飲食店「AKITADININGなまはげ」銀座店のなまはげが「今年の金足農は違うな」と歓喜。準決勝は「山で見た」という。

◆にかほ市 秋田県の南西部に位置し、南に「出羽富士」で名高い鳥海山、西に日本海を望む。出身者に日本初の南極探検家・白瀬矗(のぶ)中尉、電子部品大手のTDKの創業者・斎藤憲三氏らがいる。昨年11月30日の人口2万4328人