日本ハム王柏融「ヤバイ」古巣パワー注入で覚醒予感

台湾・嘉義で古巣の春季キャンプに参加して自主トレを行っている日本ハム王柏融(撮影・木下大輔)

【嘉義(台湾)14日=木下大輔】日本ハム王柏融外野手(26)が来日2年目の本領発揮へ、王者のパワーを注入中だ。

18年まで所属した楽天モンキーズ(前ラミゴ・モンキーズ)の春季キャンプに、12日から参加中。台湾球界を7度制覇し、現在3連覇中の強豪で、楽しみながら体を追い込んでいる。昨季は相次ぐ故障で不本意な成績に終わったが、心身とも充実のオフを過ごしている今季、台湾最強打者が覚醒の予感を漂わせた。

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早朝から「ボーロン・スマイル」が全開だった。王柏融の自主トレ拠点は、台湾の中南部にある嘉義。同地は古巣の春季キャンプ地で「楽しい雰囲気で練習ができています」。勝手知ったる面々と、刺激しあいながら、来日2年目へ備えている。1年前は新たな挑戦を前に1人で自主トレも、方針転換した。「台湾チームの春季キャンプは練習量も多いので」と参加を志願し、快く受け入れてもらった。

どんな練習をしていても、笑顔が絶えない。「仲がいいので、冗談も言い合いながら楽しくやっています」。この日午後には球場に隣接する陸上競技場で、400メートルのトラックを計7周した。厳しいランニングメニューでも「ヤバイ」「アツイ」など昨年覚えた日本語も交えながら、明るく全メニューを消化した。「まだまだ厳しい練習メニューはあります」と、どんどん肉体を追い込むつもりだ。

来日1年目は不本意なシーズンだった。4割男、台湾最強打者などの触れ込みで日本デビューも「ケガでチームに貢献できなかった」。88試合出場で打率2割5分5厘、35打点、3本塁打と実力を発揮できなかった。反省点は「シーズンを通して打撃が小さくなって、体が伸びない感じがあった」。特徴的なフォロースルーの大きさが影を潜め、本来の打撃を見失った。今オフは自身の形を取り戻すことをテーマに、練習を重ねている。

屋外でのフリー打撃では「飛距離も伸びている感覚がある」と手応えを感じている。ウエートトレーニングによって腕周りは太さが増し、体もシェイプアップしたもよう。今季こそ結果を残す「自信がある」。その根拠は、顔をくしゃくしゃにしながらテンション高く練習に打ち込む姿に凝縮されている。「去年失敗したことも全部が収穫です。健康第一で、今年はチームに貢献したい」。ほほえみながら言い放った決意には、力がみなぎっていた。

○…王柏融は同じ左の強打者である小笠原ヘッド兼打撃コーチとの初対面を心待ちにしている。「小学生の時に小笠原さんの名前を聞いたことがあった。すごく伝説的な打者なので覚えています」。2月の春季キャンプに向けて「打撃についてのアドバイスも楽しみだし、考え方や、どんな経験をしてきたのかも知りたい」と指導を楽しみにしていた。

○…王柏融は東京五輪出場への意欲も見せた。台湾代表は、自身も出場した昨年のプレミア12で出場権を獲得できなかった。今後はシーズン開幕直後の4月1日から5日まで台湾で開催される世界最終予選に回る。「球団から許可をいただければ、台湾のためにがんばりたいです。一番いい国際大会で、いろんな国の選手と対戦したい」と話した。

◆王柏融の昨季成績 3月29日オリックス戦に先発「5番・左翼」で“日本デビュー”したのを皮切りに、88試合(先発82試合、代打6試合)に出場。先発ポジションは左翼51試合、DH31試合、打順は3番13試合、4番1試合、5番55試合、6番8試合、7番5試合。右投手からは打率2割6分8厘も左投手は2割2分1厘で、安打の方向は右46%、中堅29%、左24%だった。

◆王柏融(ワン・ボーロン)1993年9月9日、台湾・屏東県生まれ。中国文化大在学中の14年にU21W杯優勝に貢献。15年ドラフト1位でラミゴ入りし、同年デビュー。2年目16年はリーグ初200安打、歴代最高打率4割1分4厘などでMVPなど6冠に輝いた。台湾4シーズンで通算打率3割8分6厘の成績を残し、19年日本ハム入団。182センチ、85キロ。右投げ左打ち。