九州魂継承、地元コーチが守る常勝ソフトBのDNA

19年の秋季キャンプで走塁練習を行う牧原大成(左)と九鬼隆平(右)に指導する本多雄一内野守備走塁コーチ

“九州魂”は引き継がれる-。プロ野球・ソフトバンクホークスは地元福岡に根ざし、常勝軍団に上り詰めた。球団もダイエーからソフトバンクへと地元密着を掲げ、選手も九州の金の卵を発掘し育ててきた。その選手が今度はコーチとして、また九州が生んだスターの卵を育てている。福岡出身の本多雄一1軍内野守備走塁コーチ(35)をはじめ、九州出身のコーチが伝統を守り続ける。

ソフトバンク本多コーチは指導者歴1年を終え、反省の日々だったと振り返る。「まだ現役の気持ちのまま春季キャンプに入り、シーズンでも選手と一緒に先輩のように戦った感じだった」。そのなかで、このチームでコーチになれたことに感謝した。

本多コーチ 九州のチームの指導者に選んでもらえたことには感謝している。指導というか、自分は実績はないのでえらそうなことは言えないが、野球だけでなく、ひとりの社会人を育てる気持ちで接している。

指導者の「守備範囲」としては、主に内野手だが、牧原、今宮、内川らが九州出身。「野球の素晴らしさを知ってほしいし、やりがいを感じられるようにしてやりたい。自分だけでなくファンも楽しませてほしい」。九州出身としては郷土出身の選手に自分が身につけたスピリッツは引き継いでいきたいと思っている。

福岡・戸畑商出身の小川一夫2軍監督(65)も思いは同じだ。スカウトから編成部門を担当していた時期もあり「九州から発掘してきた仕事については誇りに思ってますよ。南海ホークスが福岡にきたときから今の状況を夢見ていた。地元チームの強さをみて、ファンはよろこんでもらいたい」と温かい「父」のような「存在」で若い選手を包んでいる。「九州出身のコーチも増えたことも喜んでいいことだよね」と歴史を刻んできたことも満足だ。

立花義家1軍打撃コーチ(61)と久保康生2軍投手コーチ(61)はともに柳川商(現柳川)出身で「同級生」。久保コーチは「高校を卒業してまた福岡に戻ってこれたのも縁だし運命だと思ってます。感謝の気持ちを忘れずにやっていきたい。2軍本拠地筑後は柳川に近いしね」とほほえむ。

熊本・九州学院出身の吉本亮3軍打撃コーチ(39)は、ソフトバンクでプレーし引退後、球団に残って、現在は育成選手を主に担当する。「ずっと九州で出来たのは幸せ。常勝ホークスの力に少しでもなりたい」。来季からは長崎・佐世保出身の城島健司・球団会長付特別アドバイザー(43)がチームに復帰する。脈々と流れる「九州スピリッツ」は今後も選手に注がれ続ける。【浦田由紀夫】

◆本多雄一(ほんだ・ゆういち)1984年(昭59)11月19日生まれ、福岡県出身。鹿児島実-三菱重工名古屋を経て05年大学・社会人ドラフト5巡目でソフトバンク入団。10、11年に連続盗塁王。ベストナイン1度(11年)、ゴールデングラブ賞2度(11、12年)。18年引退後、19年から内野守備走塁コーチ。右投げ左打ち。

◆小川一夫(おがわ・かずお)1954年(昭29)4月16日生まれ、福岡県出身。戸畑商では甲子園出場。72年ドラフト5位で南海(現ソフトバンク)に入団し捕手専念。78年引退後はコーチ、スカウトを歴任。杉内、新垣などを獲得。千賀も発掘した。11年から3季、2軍監督。フロント時代を経て18年から再び2軍監督。右投げ右打ち。

◆久保康生(くぼ・やすお)1958年(昭33)4月8日生まれ、福岡県出身。柳川商から76年ドラフト1位で近鉄入団。阪神、近鉄で活躍し97年引退。通算550試合登板71勝。98年からは近鉄、阪神などコーチを経て18年ソフトバンク2軍投手コーチ就任。右投げ右打ち。

◆立花義家(たちばな・よしいえ)1958年(昭33)10月27日生まれ、福岡県出身。「史上最強」と呼ばれた柳川商で甲子園出場。77年クラウン(現西武)入団。西武全盛期を支えた。93年引退後、会社員を98年からダイエー、オリックス、西武、ロッテコーチなどを歴任し17年から現1軍打撃コーチ。左投げ左打ち。

◆吉本亮(よしもと・りょう)1980年(昭55)5月8日生まれ、熊本県出身。九州学院ではスラッガーとして甲子園で2打席連発を経験。「松坂世代」として98年ドラフト1位でダイエー(現ソフトバンク)に入団。09年から2年ヤクルトでプレーし11年限りで現役引退。12年からソフトバンクのスタッフ就任。18年から3軍打撃コーチ。右投げ右打ち。

◆田之上慶三郎(たのうえ・けいさぶろう)1971年(昭46)9月17日生まれ、鹿児島県出身。指宿商から89年ドラフト外でダイエー(現ソフトバンク)に入団。大きなカーブが武器の右腕。07年限りで現役引退。プロ通算11年で39勝。その後ソフトバンク、日本ハムコーチを経て14年11月からソフトバンク2軍投手コーチ。右投げ右打ち。

◆佐久本昌広(さくもと・まさひろ)1974年(昭49)7月15日生まれ、沖縄県出身。久留米工大付(現祐誠)を経て大和銀行でプレー。95年ドラフト4位でダイエー(現ソフトバンク)に入団。阪神、横浜(DeNA)で活躍しプロ11年通算19勝。07年引退。会社員を経て15年からソフトバンクのコーチ就任。左投げ左打ち。

◆吉鶴憲治(よしつる・けんじ)1971年(昭46)5月3日生まれ、鹿児島県出身。鹿児島商工(現樟南)で甲子園を経験。トヨタ自動車を経て92年ドラフト4位で中日入団。ロッテ移籍を経て02年引退。ロッテコーチを経て16年11月にソフトバンク3軍バッテリーコーチ就任。18年から1軍同コーチ。右投げ右打ち。