楽天岸は「フォームを作る場所」/ブルペンの謎

7日、ブルペンで投球する楽天岸

<深掘り。>1=投手の目線

野球の世界で最も厳か、かつ特殊な場所が「ブルペン」だ。投げ込む息づかい、スパイクがマウンドの土をかき込む乾いた音、ミットをたたく破裂音。私語厳禁の濃厚な空間で、投手たちはコツコツと自身のフォームを作り、磨き上げていく。素朴な疑問をつぶしながら、職人たちの工房を探求する。【プロ野球取材班】

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Q プロの投手にとって、「ブルペン」とは?

A 楽天牧田は「試合で結果を出すために準備する場所ですね」と言った。西武時代、キャンプ中には300球を超える投げ込み日を作った。毎年のように野上(現巨人)と球数を競い合ったが、そこにも確固たる理由が存在した。「試合で100球とかを超えて、へばった時にいかに力感なく投げられるかの練習。特に、この時期は感覚をつかむのが大事」と説明した。

美しい投球フォームでキレのあるボールを投げ込む楽天岸は「投げて、フォームを作っていく場所ですね。僕は(オフ中の)自主トレでは入りませんから」と言った。職人が作業場で丁寧に物作りするように、岸はブルペンでフォームを作る。ロッテ川越1軍投手コーチは指導者の目線で捉えた。「準備の大切さを学んでほしい。朝起きて、練習に来て、ブルペンに入る。全てに準備が必要。例えば美馬は独自のペースがある。そういうものを若手にも見てほしい」と話した。

Q ブルペンでの「立ち投げ」って、何でするの?

A 自主トレからキャンプにかけ、プロの投手は肩を作る過程で「立ち投げ」からスタートする。1月末に行われた巨人の宮崎合同自主トレでも、ベテランの大竹が初日から2日連続でブルペンで立ち投げし、3日目に座った捕手を相手にボールを投げた。

なぜ、立った捕手を相手に投げるのか。沢村は「体への負荷の違い」を挙げた。「平地と傾斜での投球では、体への負荷は全然違います。さらに、低く投げようとすれば体を沈みこませる必要があるので、負荷がもっとかかるのです」と説明。桜井も「徐々に体を慣れさせるため」。ロッテ美馬も「傾斜があると、つく足の負担が大きいからじゃないですか。座ると角度がある分、負担も大きくなるので」と話した。感覚、状態が上がってくれば捕手に座ってもらって変化球を解禁。ボールの強度を上げていく。調整を順序立て、シーズンに入っていく。

Q キャンプ中、投球後に踏み出し足の位置をチェックするのはなぜ?

A ヤクルト五十嵐と近藤は、投球後に自らの踏み出し足の位置を歩幅で計っていた。シーズン中、マウンドでの投球前に踏み出し足の位置をチェックする選手は多いが、投球後に確認する選手はあまり見ない。五十嵐は、昨季まで一塁側のプレートを踏んでいたが、今キャンプは三塁側からの投球を模索中。「踏み出す位置がどれくらいなのか、クロスステップをしていないかを確認している」と明かした。一方の近藤は「足場のチェックは、バロメーターの1つ」と説明。第4クールでブルペンに入った際には、シーズン中とほぼ同じ7歩。本人が「飛ぶ」と話すように、一般的に多い6~6歩半よりも遠い。「どんなマウンドの状況でも100%で投げるのが仕事。今の段階でフルパワーの投球ができたかなと思う」と話した。