マウンドから掘り出されたレンガ6個/ブルペンの謎

ブルペンで投球するDeNA浜口(2020年2月9日)

<深掘り。>3=アラカルト

野球の世界で最も厳か、かつ特殊な場所が「ブルペン」だ。投げ込む息づかい、スパイクがマウンドの土をかき込む乾いた音、ミットをたたく破裂音。私語厳禁の濃厚な空間で、投手たちはコツコツと自身のフォームを作り、磨き上げていく。素朴な疑問をつぶしながら、職人たちの工房を探求する。【プロ野球取材班】

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Q DeNAはいくつもの機械やカメラを設置していますが、あれは何

A NPBでいち早く導入している測定機器。捕手の手前5~6メートルの地面に設置されているのが「ラプソード」。球速やボールの回転数、回転軸、縦横の変化量などを数値として見ることができる。計測データはiPad(アイパッド)端末で確認できる。

投手後方の小さなカメラは、昨秋導入した「Edgertronic(エッジャートロニック)」というハイスピードカメラ。1秒間に1000コマ近い撮影が可能な高性能カメラで、リリースの瞬間や、どの指で、どう押し出しているかまで判別可能。浜口は「ボールが思った通りに出ているか確認できる。いろんな人のデータがあれば、その人の得意な変化球を見て参考にできる」。ブルペンは投げ込みを行う鍛錬の場でもあるが、有益なデータを蓄積する場所でもある。

Q ブルペンでの「流儀は」ありますか。

A 日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏 流儀ではないが、ホームチームのブルペンはマウンドが3つある球場が多い。先発は、真ん中で投げて最後の調整をする。リリーフは2人が投げる時は、両端を使い、なるべく広い空間の中でピッチング練習をする。そして、ブルペンでは私語はない。聞こえてくるのはブルペンキャッチャーのミット音と「ナイスボール」の声だけ。集中力を研ぎ澄ませてマウンドに向かう前のブルペンは、緊張感がみなぎる神聖な場所という感じがする。

◆ブルペンの語源 Bullpenはbull=牛と、pen=囲い、という2語で構成されている通り、元々は「家畜を入れる場所」。1860年代の南北戦争時「人間(捕虜や人質)を押し込めておく囲い」の意味に使われていたという。転じて「フィールド上にロープを引いて仕切った立ち見席」を示す言葉になった。1900年代、各球場は両翼のファウルグラウンド、かつてブルペンがあった場所に救援投手用のマウンドを設けたため「投球練習場」の異名となった。言葉の定着にはBull Durham(ブル・デュラム)という「この牛にホームランをぶつけたら現金50ドルを進呈」というたばこの広告看板が大きな役割を果たした。各球場の看板と近くにある「投球練習場=bullpen」という通称が結びつき、ブルペンという呼び名が定着した。

◆マウンドトリビア マウンドからレンガ6個が掘り出された。前代未聞の事件は、06年3月29日の楽天-オリックス2回戦(フルキャスト宮城)で起きた。オリックス吉井(現ロッテ投手コーチ)が3回、マウンドの違和感を訴えた。整備員が土を掘り起こすと、幅20センチの物体が6つ発掘された。

レンガの正体は固められた土。球場長は「表面部分から8~10センチ下に埋め込んである。神宮球場などと同様の構造で、投手陣の要望で足場の掘りすぎを食い止める土台のようなもの」と説明した。接触するほど深く掘られたケースは初で、取り除かれて試合は再開した。

マウンドの硬軟は規定がなく、一般的に米大リーグは硬く、日本は軟らかい。高さは25・4センチで、傾斜も投手板の前方15・2センチから本塁へ182・9センチ地点まで30・5センチにつき2・5センチと規定される。だが、千賀(ソフトバンク)ら多くの投手が、札幌ドームは傾斜が大きいと感じている様子。逆に地方球場は傾斜が小さく感じるようで、苦手とする投手も多い。