勝負師・梨田元監督の回復を願っています/田中賢介

09年7月3日 梨田監督(右)と限定ユニホームを披露する田中賢

<田中賢介・野球考>

新型コロナウイルスの感染拡大は収束が見えず、プロ野球の開幕もいつになるのか分かりません。僕も基本的には自宅におり、1歩も外に出ない日もあるくらいです。08年から4年間、一緒に戦った梨田監督が感染したと聞き、とても心配しています。

僕は現役時代、ベンチでは必ず監督の真ん前に座っていました。声もよく聞こえますし、考え方などが分かるんですよね。テレビなどに映る梨田監督はいつも温厚で、ダジャレを言ったりしていますが、裏ではすごく勝負師だなと感じていました。1年間をトータルで考え、チームを導いていきます。

プランを明確にし、しっかりと伝えてくれるのもやりやすかったです。例えばダルビッシュが先発の日なら、2、3点取れば勝てるので「初回に出塁したら送りバントするよ」と。そうじゃない日は「初回から走ってくれ」と。こちらもゲームプランが組みやすかったです。

また、選手のいいところに目を向けてくれる監督さんでもありました。就任されて最初のミーティングでも「長所をどんどん伸ばしていってほしい」とあいさつされていました。短所ではなく、とにかくいいところを伸ばす。すごく勉強になりました。

梨田監督はベンチで「こうなったら勝てるなぁ」と、ボソッとつぶやくときがあります。印象的だったのは、09年10月21日のCS第2S第1戦です。4点を追って9回の最後の攻撃。ここで監督は「(1番の)賢介が出て、(2番)ひちょりが出て…(5番)スレッジがホームランを打てばサヨナラだな」って。実際に、1死から僕が右前打で出塁すると、稀哲さん、稲葉さんが続いて1点を返し、(高橋)信二さんの四球を挟んで、スレッジのサヨナラ満塁本塁打が飛び出したんです。勝つためのイメージを植え付ける。そんな意図だったんだと思います。

実は今季の札幌ドーム開幕戦になるはずだった3月24日楽天戦は、梨田さんとW解説の予定でした。僕にとっては解説者としてのデビュー戦でもあります。“お預け”になってしまったので、仕切り直して、ぜひ一緒に解説をやりたい。まだまだ学ばせていただきたいこともたくさんあります。頑張って、乗り越えてほしい。回復を願っています。

◆09年クライマックス・シリーズ第2ステージ第1戦 4点を追う日本ハムは9回、楽天の守護神・福盛を攻略。1死から田中賢が右前打で出塁すると、続く森本、稲葉が中前打で1点を返す。さらに高橋が四球を選んで満塁とすると、スレッジが左翼席へ逆転満塁本塁打を放った。完全に勢いに乗ったチームは、2戦目に岩隈を打ち崩して王手をかけ(アドバンテージ1勝あり)、4戦目で日本シリーズ進出を決めた。