交流戦16年目で初の中止、5月開幕断念で球界苦境

19年 交流戦の優勝トロフィー

コロナ禍の前にプロ野球から交流戦が奪われた。17日、12球団代表者会議がオンラインで開催され、交流戦の中止と5月中の開幕を断念することが決まった。05年の導入以来、交流戦の中止は初。6月以降の開幕を目指して協議を続けていくが、現状では最大でもシーズン125試合。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、球界が苦境にあえいでいる。

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交流戦の歴史が16年目にして初めて途切れた。前日16日に緊急事態宣言が全都道府県に拡大。新型コロナウイルスの前に決断を下すしかなかった。日本野球機構(NPB)の斉藤コミッショナーは「選手のコンディションを考えても、野球の開催日を5月中に行うことは断念せざるを得ない。レギュラーシーズンの試合数もある程度、削減せざるをえない。その中で日本シリーズまでの日程等を考慮し、交流戦開催を今年は見送らざるを得ないという結論になった」と話した。

交流戦は5月26日から6月14日まで各チーム18試合ずつ、計108試合を予定していた。同期間内に日程消化できなければ勝率1位チームが決まらず、シーズン終盤の振り替えも現実的ではない。5月26日からの実施が厳しくなった状況では中止するしかなかった。初年度からの特別協賛社、日本生命の理解も得て、発売済みのチケットの払い戻しも決定。同期間にリーグ戦を行うことに同コミッショナーは「それはある」と可能性に触れたが、5月26日から数週間内に試合が行えるかは不透明だ。

現状での目標はペナントの最大125試合の遂行に切り替わった。「今の計算ではそう」。球宴、CS、日本シリーズの実施については「今日は協議はありませんでした。状況を見ながらだが、今のところはギリギリできたらなと思う。ただ状況次第」とウイルスの終息に願望を込めた。

水面下では125試合を頂点に100試合を切るシミュレーションの準備も進めているとみられる。無観客試合も視野にあり、感染状況をにらみながら段階的に入場制限を緩和していくプランもある。開幕からの無観客試合に「みんなで話している段階ではない。ただ状況が状況。私としてはそういうことも否定できない。最悪、お客さんが入らない状況でもテレビ、ネットで配信され、みなさんが元気になっていただけたらいいなという考えはある」と異例の措置を示唆した。

22日には政府の専門家会議が予定され、23日にJリーグとの新型コロナウイルス対策連絡会議と12球団代表者会議が予定される。緊急事態宣言の期末となる5月6日を前後して、政府の専門家会議が行われる情報もある。開幕日についての協議は23日、または5月初旬に行われるが、現状では今季の出発を誰にも予見できない。【広重竜太郎】

◆新型コロナウイルス感染拡大を巡るプロ野球界の経過

2月21日 日本野球機構(NPB)と12球団が、感染防止のために共通の対策を実施することを確認。

25日 巨人が、29日と3月1日に主催するヤクルトとのオープン戦を無観客で実施すると発表。

26日 臨時の12球団代表者会議で、オープン戦の残り全72試合を無観客で実施すると決定。

3月3日 Jリーグと連携して「新型コロナウイルス対策連絡会議」を設置し、第1回会合を開いた。

9日 第2回対策連絡会議で開幕延期の助言を受け、臨時の12球団代表者会議で延期を決定。

12日 開幕を4月10日以降にすると発表。

20日 当初開幕予定日を迎え、無観客の練習試合が4試合行われた。

23日 12球団代表者会議で4月24日の開幕を目指すことを決定。1軍の練習試合はいったん白紙に。

26日 阪神藤浪がPCR検査を受け、NPB球団所属選手初の陽性判定。

27日 阪神伊藤隼、長坂も感染が判明。

30日 イースタン・リーグとウエスタン・リーグの両リーグ運営委員会が31日から4月6日までのファーム練習試合中止を決定。

31日 パ・リーグ6球団がオンラインで社長会を開き、4月24日の開幕を断念することで一致。

4月1日 楽天などで監督を務めた梨田昌孝氏が感染。重度の肺炎で集中治療室に。

2日 阪神小幡が発熱と倦怠(けんたい)感でPCR検査を受け陰性。

3日 12球団代表者会議で24日の開幕を再々延期すると決定。新たな開幕日は設定せず、4月下旬から5月上旬に開幕日を決める方針を明かす。

5日 阪神伊藤隼が退院。7日に藤浪、8日に長坂も退院。

8日 プロ野球選手会が「新型コロナウイルス感染症拡大防止活動基金」への寄付を開始。

14日 元阪神ヘッドコーチの片岡篤史氏が、自身のYouTubeで感染していたことを公表。

17日 NPBがセ・パ交流戦の開催中止を発表。