故障者防止で第2次キャンプ的な調整必要/中西清起

中西清起氏

<球道追球>

政府の緊急事態宣言が延長される見通しで、再びプロ野球の開幕が見えない事態に陥った。

新型コロナウイルス感染拡大の収束が見えず、自主練習を続ける阪神投手陣も苦闘が続く。元阪神投手コーチの中西清起氏(58=日刊スポーツ評論家)は、故障者を防ぐために第2次キャンプ的な調整が必要と説くなど、“開幕後”を見据えて提言した。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

寺尾 3月9日に従来の3・20開幕延期が発表されてから約2カ月。それでも開幕日が見えてきません。

中西氏 開幕から逆算しながら調整ができない今は、心身ともに練習に強弱がつけられない。キャンプ、オープン戦と積み上げてきた成果がゼロになった。キャンプ前の自主トレに戻った状態といえる。

寺尾 ゼロまで戻った?

中西氏 せっかくキャンプで肩を張らせて、フリー打撃やシート打撃で打者相手に投げてきた。開幕が決まらないと投げ込みができない状況で、ピッチャーは肩を休ませない程度に投げている状況だろう。

寺尾 本来の3月20日開幕を前に、仕上げの段階で全てが止まりました。

中西氏 投手は開幕前にいったん「落ちる」状態になる。体も肩もキャンプからの蓄積疲労がくるからだ。「落とす」という人もいる。実戦で投げながら、この状態になった時が仕上がってきた合図。体も肩も作り直してそこまでもっていかないといけない。

寺尾 またアップダウンの調整を始めるわけですか。

中西氏 開幕日が決まっても、簡単ではないということ。投手の調整はデリケートだ。肩を芯まで作って、それから実戦に投げて調整となれば、開幕まで約1カ月は必要。キャンプのやり直しのイメージになる。そこで急がせれば、肩、肘に違和感を訴えて、故障者続出になりかねない。

寺尾 故障者を防ぐために2次キャンプ的な練習が必要というわけですね。投手力で勝負する阪神は特に今後の調整が重要になりますね。

中西氏 先発陣は西が中心で、青柳がいて、期待株は高橋、秋山、才木、藤浪らが出てこないとしんどい。まだ投げてみないとわからない投手が多いが、逆にいえば化ける可能性も秘めている。ブルペンで投げる100球、150球より、試合で3イニング投げる方がしんどい。実戦を重ねながら、感覚を取り戻さないといけなくなった。

寺尾 ベテランはうまく調整するでしょうが、若手は戸惑うのでは。

中西氏 ローテーションに入るような投手は、仕上げていく感覚をつかんでいる。教える側からいうと、若手は実戦でイニングを伸ばしながら作っていく。メンタル面も含めてコーチがうまく導きたい。

寺尾 開幕しても無観客試合になります。

中西氏 ファンの声援でアドレナリンが出てこそ、燃えるプレーができる。そのあたりの緊張感の持続も難しくなる。

寺尾 試合数も例年の143試合から大きく減ることが濃厚です。今後、開幕が決まるまでにやっておかなければいけないことは?

中西氏 開幕日が決まって、いざ合同練習がスタートするとなった時、60球、70球は投げれるように準備しておきたい。開幕からのヨーイドンで、投手力が整備されているチームが優位に立つ。

<阪神投手陣の近況>

◆西勇 休止期間は、無人の公園で走り込み。家では筋トレに励み、過去の映像で自身の投球を再確認。(4月20日)

◆青柳 自主練習では5度目となるブルペン入りで、原口を相手に変化球を交えて41球。(4月29日)

◆ガンケル 1週間に1~2度ブルペン投球。(5月1日)

◆中田 ブルペン投球のほか、米国ジム仕様の重さの違うボールで壁当てなどで鍛錬。(4月26日)

◆秋山 4月21日に自主練習再開後初めてブルペン入り。坂本相手に直球を約40球。(4月21日)

◆岩貞 4月21日に自主練習再開後初ブルペン。スライダー、フォークなども交え約30球。(4月21日)

◆藤浪 コロナ感染から退院し、4月24日から自主練習参加。同日はキャッチボールやウエートトレーニング。(4月24日)

◆谷川 休止期間は、オープン戦などでの投球映像をチェック。現在は自身を一から見つめ直すことを意識。(4月23日)

◆スアレス 休止期間は靴下のような袋にボールを入れ、シャドーピッチング。(4月29日)

◆エドワーズ 休止期間は、自宅では主に筋肉を刺激するトレーニング。重量を使うのではなく、動きの中での流れを重視。(4月19日)

◆守屋 自主練習では各クール1度のブルペンが目安。(4月28日)

◆高橋 休止期間は左肩インナーマッスル強化。練習内容など日記もつけ始めた。(4月15日)

◆飯田 休止期間は脂肪燃焼トレに挑戦。白米ではなくオートミールにするなど、食生活も大きく改善。(5月1日)

◆望月 休止期間は右脳トレ用パズルでリフレッシュ。壁当てやネットスローも。(4月21日)

◆岩田 自主練習では1クール1度、休み前のブルペン入りを予定し練習を継続。(4月27日)

◆能見 休止期間はほとんど練習できず。だがオフとキャンプで投げ込んだため不安は少ない。(4月24日)

◆岩崎 休止期間は体幹トレ、インナーマッスル強化、ストレッチなどのメニューを継続。(4月28日)

◆馬場 休止期間に栄養学の勉強のほか、新聞を読むなど、新たな取り組みにも挑戦。(4月24日)

◆小川 休止期間は壁当てやインナーマッスルを鍛えるなどしてきた。(4月20日)

※()内はオンライン取材対応もしくは広報通じた取材や情報提供日