広島V3監督の緒方孝市氏、セ予想「巨人広島阪神」

セ・リーグ3連覇を果たした緒方孝市氏(撮影・加藤孝規)

<今季から日刊スポーツ評論家「三つどもえ」>

指揮官として18年まで広島に3連覇をもたらし、日刊スポーツ評論家に就任した緒方孝市氏(51)が大胆予想だ。19日の開幕に向け、重要な調整時期を見据えつつ今季のセ・リーグは昨年優勝の巨人に対し、広島、阪神が挑戦する三つどもえになると予想した。

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19日の開幕に向け、2日から練習試合が開始だ。よくここまでこぎ着けられたと、関係各位には頭の下がる思いだ。監督、選手は野球ファンだけでなく、みんなに元気を感じてもらえるようなプレー、試合を期待したい。

しかし簡単ではない。一般的にはオープン戦で一度、疲労をピークにして、そこから徐々に開幕に入っていくのが理想。特に先発投手はそうだろう。しかし今季に関していえば、そんな時間的余裕はない。体力的にも気持ちの面でもずっと緊張を保てているはずはないし、練習はしていても実戦での疲労は違う。練習試合でどこまで仕上げられるかと同時に思わぬケガ、故障が何よりこわい。

120試合制とはいえ、遅い開幕で過密日程になるのは目に見えているし、選手層の厚さが特に今季のポイントになると思う。

その上でやはり昨年優勝した巨人に対し、どこが挑戦していくかという構図になると思う。自分としてはここに阪神、そして広島が絡む三つどもえになるのでは、と思っている。

巨人の原監督は名将だ。その特徴は何よりブレないことだ。阿部や坂本にバントをさせるのは、なかなかできない。広島にすれば鈴木誠也に犠打を命じることだ。自分はそれはしなかった。4番打者は試合を背負うものという思いからだが原監督は勝つためにそれをやる。それで実際にそれで勝つのだから、やはり、すごいとしか言えない。

古巣・広島も優勝候補に入れていいと思う。自分がやっていたので言いにくいが昨年は主力打者、ブルペンが3連覇したときに比べ、不調だった。言うまでもなく勝ち続けるのは難しいし、どこかでそうなるのは否定できない。もちろん、それに代わる戦力をすぐに補充できればいいのだが、そう簡単ではない。

その意味で各選手がそれぞれの好調時に戻ってくれば十分、戦える戦力だ。さらに今季は明るい材料がある。投手では森下が加入したのが大きい。10勝、15勝とは言わないが十分、1軍戦力になる投手だ。代わりのいないポジションを任せている田中広も元気に復帰してくれる。小園も伸びているし、西川も同じ。新外国人のピレラも打撃は期待できそうだし、面白い打線になると思う。

佐々岡監督にすれば、船出のシーズンがこういう異例の形になって落ち着かない日々だと思うが、頑張っていただきたい。

阪神は監督をしている間、ずっと負けたくない存在だった。自分の監督2年目に“カネ(金本知憲前監督)”が監督に就任した。広島でいっしょに外野を守っていた仲だし、学年も同じ。楽しい思いもあったが同時に負けたくない思いで戦っていた。

矢野監督にも同じことが言える。彼も同学年。なにより感心したというか驚いたのが投手の起用法だ。昨年1年間しか対戦していないが対戦時にこちらから見ていて「ここで代えるのか」「まだ引っ張るのか」と目を見開かされた。2軍監督を経験していたとはいえ、1年目であれができるのは大したもの。さすがに捕手出身監督という印象を受けた。

この5年間、阪神はやはり投手中心のチームだったがそろそろ打者が伸びてくる時期だと思う。近本はいいし、大山、高山といい選手がいる。その上でやはり外国人打者がキーになるだろう。ボーア、サンズがそれこそバース級の働きをすれば一気に変わる可能性を秘めている。

もちろん2年目でチームを完全に把握した与田監督率いる中日も伸びしろがある。監督時代に苦戦したDeNAは筒香の穴をどうするか、だろう。佐々岡監督同様、1年目の高津ヤクルトは投手陣の整備がどこまで進むか。いずれにしても試合数が少ないだけに、スタートダッシュが重要なシーズンになるのは間違いない。【構成=編集委員・高原寿夫】

<緒方監督と阪神戦>

◆黒田で白星発進(15年4月11日=7○2、甲子園)先発黒田が投打の活躍で勝利投手に。阪神戦初戦を飾り、緒方監督は「つないでつないでの中で、黒田まで打ってくれた」と感謝。

◆黒田VS藤浪、あわや乱闘(15年4月25日=11○3、マツダスタジアム)黒田が打席で、藤浪から内角を攻められ激高。乱闘寸前となった。直後に黒田は進塁打。緒方監督は「1番から9番黒田まで、打線として機能した」とたたえた。

◆幻弾がCS逸の遠因に(15年9月12日=2△2、甲子園)延長12回に田中の中堅左への大飛球はフェンスを越えたように見えたが、判定はインプレーで三塁打。勝ち越し点はならず引き分けに。後に誤審と認められた。結局シーズン4位に終わり、3位阪神とは0・5差でCSならず。悔やまれる結果に。

◆9点差逆転負け(17年5月6日=9●12、甲子園)9-0から大逆転負け。球団史上最悪タイの9点差をひっくり返され、チームに険悪な空気が漂った。緒方監督は「明日も試合がある」と語るのがやっと。

◆甲子園で2連覇達成(17年9月18日=3○2、甲子園)巨人以外ではセ初となる、球団2度目の連覇を達成。「求める野球を選手がどんどんしてくれた。本当に成長を感じた」と目頭を押さえた。

◆最終対決敗れCS消滅へ(19年9月21日=2●4、甲子園)シーズン最後の直接対決で敗れ、同カード終了。ここから6連勝した阪神に抜かれて4位に終わり、緒方監督は辞任した。