ロッテ中村稔弥が先発初勝利、グラブ位置変え翻弄

オリックス対ロッテ 益田(手前左)からウイニングボールを受け取り笑顔の中村稔(中央)(撮影・渦原淳)

<ロッテ4-0オリックス>◇9日◇京セラドーム大阪

グラブ位置のわずかな違いが、ロッテ中村稔弥投手(24)の道を切り開いた。オリックス相手に6回1安打無失点で、先発初勝利を挙げた。

ロングリリーフで開幕ベンチに入り、2軍で再調整し、先発左腕として戻ってきた。「先発をしたくて、ずっと任された役割をやってきた中で、今回チャンスが巡ってきて。そこで勝てたのは本当にうれしかったです」。亜大を卒業し、プロ2年目。あどけなさが残る表情と声色で喜んだ。

独特なタイミングで自慢の直球を投げ、相手打者を崩していく。しかし高く浮いての自滅も目立った。「(コロナでの練習)自粛明けから、速い直球を投げたくて(リリース直前の右手の)グラブの位置が勝手に変わっていて」。

好調時の映像と比較し、そう気付いた。大隣2軍投手コーチからも指摘を受けた。グラブを低めに修正し、今はしっかり低め直球でカウントを作れる。先発したここ2試合、序盤3回で打者合計19人と対戦し、無安打1四球。相手を初見で面食らわせていることが大きい。

1点リードの6回には、2死一、二塁のピンチを迎えた。打撃好調のオリックス伏見と対する。3ボールと苦しむも、直球2球でフルカウントまで進めた。

勝負球に、捕手田村からツーシームのサインが出た。DeNA山崎らも投げる亜大伝統の魔球だ。しかし「初めて田村さんのサインに首を振らせてもらいました」。自分で選んだ内角直球が、伏見のバットの根元を押し込み、一ゴロに。「勝負! という気持ちで投げ抜けました」。

長崎・佐世保の生まれ。グラブの親指部分に県のシルエットをデザインする若者にとって、「8・9」は幼少期から戦争の惨禍を学んできた日だ。「今は出身の選手が少なくて、自分を応援してくれる人も多い。いい報告ができて良かったです」。努力と気付きを結果につなげ、勝った。なおさら、忘れられない日になった。【金子真仁】