阪神揚塩社長、選手処分は「内規に沿って厳正に」

辞任会見を行った阪神揚塩球団社長(代表撮影)

プロ野球阪神の揚塩健治球団社長が9日、兵庫・西宮市内の球団事務所で会見を行い、9月末に複数の選手が新型コロナウイルスに感染するなどした一連の騒動の責任を取って今秋に辞任する意向を表明した。以下は会見と囲み取材の一問一答。

<会見>

(冒頭で自ら)「このたびはコロナの罹患(りかん)において10名の選手の入れ替えをして戦わざるを得なくなり、ファンの皆様には大変ご心配、ご迷惑をおかけしましたことを深くおわび申し上げます。また、NPB、対戦相手チーム、そして保健所をはじめ、関係機関の皆様方にも、大変ご迷惑をおかけしましたことをあらためておわび申し上げます。3月に続いて今回2度にわたって球界全体にご迷惑をかけた事実は否めません。着任以来、いろいろな混乱を招いた球団内の最終的な責任者は私でございます。私の一存ではございますが、今シーズンのシーズン終了をもって、社長を辞することを(藤原)オーナーに申し入れ、承諾をいただきました。1日も早い混乱の収拾を願い、本日このような発表をさせていただくことになりました。チームは戦っている最中ではございますが、私なりのけじめの付け方としてご理解いただければ、と思います。申し訳ございませんでした」

-辞任の理由はコロナウイルスの感染拡大か

「コロナに感染したことだけをもって辞任するわけではございません。コロナは感染予防をしていても感染するリスクは、やはりあります。着任以来いろいろな、1つ1つの事案を今ここでは申し上げませんが、そういった混乱を招いたこと、これは球団内の最終責任者は私でございますので、そういったことを踏まえ、今回私の一存ではございますが、シーズン終了をもって退任することとさせていただきました」

-このタイミングでの発表について

「早い混乱の収拾を願ってということが1つ。それから選手たちが入院、療養ホテルから幸いにも重症に至らず、健康体で戻ってまいりました。トレーニングを始めました。このタイミングで発表させていただいて、選手たちの1日も早い実戦への復帰というものに対しても、ご理解を賜りたいと考えました」

-決断について矢野監督や選手、藤原オーナーと話は

「オーナーとはもちろん何度も話をしました。矢野監督とは、先ほど話をしました。矢野監督には『フィールド内のことについては矢野監督の範疇(はんちゅう)です。でもフィールド外についてはフロント、フロントのトップである私の責任です。監督には責任はございません』。このように伝えました。監督からは勝って恩返しをするという力強い言葉もいただきました。選手らには、監督に話をした後、先ほど室内練習場に全員集まっていただいて話をしました。私からは残り少ない今シーズンの試合ですが、順位、ゲーム差にかかわらず、1試合1試合、目の前の試合を勝ち切ることにこだわって、ぜひ勝ってほしいという話をしました。それと、矢野野球。これをぜひ残り試合でも体現してくれと話をしました。超積極的、諦めない、誰かのために。この野球を、球際の諦めない、そういうプレーが画面を通してファンにも伝わりますし、それをファンは期待しています。そういう話をしました。目の前の試合に今シーズン全力で戦って、勝ちにこだわってプレーをしてほしい、そういう話をしました」

-退任までの期間で新たな感染対策などは考えているのか

「まずは遠征における外食は一切、禁止にしました。それから、従前から進めている感染予防対策、これについては再度見直しを徹底して、ベンチ内でのマスク着用とかロッカールーム内でも必ず着用するなど、今までやってきた対策をさらに徹底して行うように指示しております。シーズン終了をもって(退任)ということでございますが、野球界は日本シリーズもございますので、基本的には12月1日付ということで今は考えております。後任はまだ決まっておりません」

<囲み取材>

-辞意を固めたのはいつごろか

「今回のチーム内の感染を受けまして、先ほど申し上げましたが、2度にわたって球界全体にご迷惑をおかけしたという事実は否めません。その時点で、私からオーナーの方に、シーズン終了をもってという話をさせていただきました」

-今回は社長自身が責任を取られるが、選手への処分は

「選手については、レポートを出させ、今、個別に面談をしているところです。それぞれの反省の度合いも確認し、厳しく、社会人として野球人としての今後の行動を指導注意してます。面談は明日には終わる予定です。それをもって、内規に沿って厳正に処分をいたします。処分の内容については、控えさせてください」

-感染者が出るのはある程度仕方がない状況でも決断した

「チーム内に感染者が出たことだけをもって辞任するわけではございません。昨年以来のいろいろな事案を含めまして、そしてこの3月と今回。球界全体に大きな迷惑をかけた。そういったことを全て含めて、球団の最終責任者である私の判断の下で辞任をするという形にさせてもらいました」

-悩んだことは

「こういった球団内の全ての責任は私、トップにありますから。やはり球界全体に2度にわたって大きな迷惑をかけた。これは大きな事実ですから。私が辞任すべきだという風に考えました」

-志半ばでの退任。チーム、球団への思いは

「今シーズンはまだ残っていますので、当然、その任務には最大限あたって参ります。志半ばという面では、矢野野球。超積極的で諦めない、誰かのために。この野球が開花して優勝してほしい。それが今年、厳しい状況になったというのはあります。来年ぜひ、それは勝ち取ってもらえると信じています」

-自身の今後は

「何も決まっていません」

<阪神2度のコロナ感染>

◆3月 藤浪がプロ野球界で初の感染者となり、翌日には伊藤隼、長坂の感染も判明。3選手の感染経路は不明ながら、他に4選手と球団外の人物を合わせ、不特定多数で大阪市内の知人宅で会食していた。外出自粛が呼びかけられる中でのことで、うち阪神選手の同居家族、同席した20代女性2人も感染。球団は活動休止となった。伊藤隼が中日2軍戦に出場したナゴヤ球場も消毒するなど他球団にも影響が及んだ。

◆9月 2軍で浜地の感染が確認された。数回にわたるPCR検査では1軍の糸原と陽川、岩貞、馬場の4選手、1軍スタッフ4人の感染も判明。遠征先での外食は禁止だったが、広島、名古屋では指定日に限り、球団関係者、家族とならば4人まで、同ポジションは禁止など制約を設けて認めていた。しかし、9月唯一の指定日だった19日に名古屋市内の飲食店を貸し切っていた福留、糸原らは計8人で会食。浜地と岩貞らは投手だけの計4人で別の飲食店の個室で会食しており、ともに内規を破ったことが問題視された。