早大・早川は左投手の手本 流れいい/上原浩治分析

10月11日の東大戦で、145キロ直球を投げた時の早大・早川のフォーム

<解体新書 上原浩治氏>

連続写真で選手のフォームをひもとく「解体新書」。今回は、26日のドラフト会議で1位指名競合が確実視される早大・早川隆久投手(4年=木更津総合)の投球フォームを、日刊スポーツ評論家上原浩治氏(45)が分析しました。

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今ドラフトNO・1投手の呼び声高い早川の投球フォームは、極めてオーソドックスで完成度が高い。「きれいなフォーム」がイコールで「勝てる」につながるわけではないが、フォームそのものに変なクセは見当たらない。この連続写真では多少の修正点が見受けられるが、試合映像で見る限り、特に修正した方がいいと思った箇所はない。あくまでも、この連続写真から見える部分で解析したいと思う。

(1)から(3)で右足を真っすぐに上げている。右投手の場合、高く上げる左足と軸足の右足が重なるようにクロス気味に上げる投手が多い。しかし、左投手は一塁に走者がいても、両足が重ならないように上げれば、そのままけん制球も投げられる。(2)か(3)の状態で顔を走者の方に向けるだけでも、盗塁のスタートが切りにくくなる。左投手のお手本になるだろう。

ただ、(3)の時点で少しだけ頭の位置が捕手側にある。だから、投げる方向に勢いをつけていく(4)でも、下半身と一緒に少しだけホームベース方向に流れてしまっている。(5)と(6)ではヒップファーストの形が強くなり、下半身が先行するようになっているが、足を上げた時点で、もう少し頭の位置を軸足の上に乗るようにすれば、もっとスムーズに下半身を先行させていくことができる。

軸足にたまった力を、(7)で投げる方向に放出していく。この時、軸足の左のスパイクに注目してほしい。かかとを浮かせずに、スパイクの内側からくるぶしまでがマウンドにへばりつくように粘れている。このように軸足を使えると、上半身の開きを抑えられる。

下半身の使い方は申し分ないが、この連続写真では上半身の使い方に気になる箇所がある。(7)では左肩と左肘が少し三塁方向に入り過ぎていて、胸を張っていく(8)でもややアゴが上がり、トップの位置も三塁側に入り過ぎている。この時点で三塁側に入り過ぎているから、(9)でもボールを持つ手の部分が頭の後ろに入り過ぎてしまう。

体が開かないように意識し過ぎているのだろう。もう少しだけでも、三塁側に入れすぎない方がいい。上半身のひねりが大きすぎると、逆に窮屈になって右肩の開きが早くなりやすい。振り遅れ気味になる分、その遅れを取り戻そうとして、腕が三塁側に引っかくような軌道になる。個人的にシュート回転はそれほど気にする必要はないと思っているが、実戦でも時折、直球がシュート回転するのも、ここが原因だと思う。

リリースの瞬間でもある(10)には力感がある。(11)では踏み出した右足でややブレーキをかけすぎてしまっているため、(12)と(13)で軸足が勢いよく捕手方向に出ていない。ここでブレーキをかけ過ぎなければ、もっとフィニッシュが跳ね上がるようになって投げっぷりもよくなると思う。

細かく微妙な修正箇所を指摘させてもらったが、全体的な流れは素晴らしい。映像では腕が振り遅れる印象もない。プロの実戦でどうなるかを見てみたいが、現時点でもかなりのレベル。昨年の広島ドラフト1位・森下と同等か、それ以上のポテンシャルがあることは間違いない。早くプロを相手に投げる姿を見てみたい。

◆早川隆久(はやかわ・たかひさ)1998年(平10)7月6日、千葉県生まれ。上堺小1年からソフトボールを始める。横芝中では軟式野球部に所属。木更津総合では1年秋からベンチ入り。2年春と3年春夏に甲子園出場。早大では1年春からリーグ戦に登板し、通算50試合で11勝12敗、防御率2・71。3年時は大学日本代表として日米大学選手権優勝に貢献。180センチ、76キロ。左投げ左打ち。