矢野阪神、惜しまれる開幕ダッシュ失敗 投打に誤算

阪神20年シーズン月別成績

<明と暗:2年目矢野阪神を検証(2)>

阪神の20年シーズンは、60勝53敗7分けの2位だった。打倒巨人を掲げて日本一を目指したが、直接対決で8勝16敗と大きく負け越し、結果として大きな差が開いた。一方で、多くの誤算がありながら昨年より順位を1つ上げ、貯金も6個増やした。2年目矢野阪神の「明と暗」と題し、1年間の戦いを検証する。

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矢野阪神2年目は苦しいスタートを強いられた。6月19日に巨人との開幕戦で逆転負けを喫すると、開幕12試合で2勝10敗。ロードが続く中、誤算が重なり低迷した。

深刻だったのは、打線の不振。主砲として期待されたボーアが開幕から18打席無安打。初ヒットは4戦目で6月の月間打率は1割9分4厘だった。初アーチが出たのは7月1日で、39打席かかった。上位打線では開幕3戦目で近本が2番から1番に。近本も6月10試合は打率1割2分8厘と力を発揮できなかった。開幕12試合で2ケタ得点は1度もなく、2ケタ安打が2試合だけ。チーム打率は同期間で2割1厘しかなく、12戦で4得点以上も、2ケタ安打を記録した2ゲームだけだった。

投手陣も開幕を挟んだ期間に誤算が続いていた。先発左腕の軸と期待された高橋が開幕延期期間中にコンディション不良となり、藤浪も2軍調整が続いた。秋山、ガルシア、中継ぎ調整を進めていた岩貞らがアピールし、開幕ローテに滑り込んでコマを整えたが、救援陣も思うように結果を残せなかった。開幕戦では頼れるセットアッパー岩崎が、まさかの敗戦投手に。その岩崎は開幕を迎えるまで、コンディション不良で苦しんでいた。守護神藤川は本来の投球とは程遠く、投打で歯車がかみ合わないゲームが重なった。

矢野監督はシーズンを終え「開幕からうまくいかず、2勝10敗でスタートして、本当に僕の中では苦しかったですし、うまくいかないなと思いが強かったです」と胸の内を語った。終わってみれば、阪神の今季月間負け越しは6月だけだった。コロナ禍で特異な調整が強いられ、タイトな日程での120試合制。7月上旬に5カード連続の勝ち越しを飾るなど、甲子園ゲームを軸にチームは持ち直したが、一気に試合消化は進み、1位浮上は1度もなかった。惜しまれる開幕ダッシュ失敗だった。【松井周治】