井納は巨人入りへ「いい話」ヤクルト、DeNA交渉

オープニングセレモニーで笑顔を見せるDeNA井納(撮影・鈴木正人)

国内フリーエージェント(FA)権を行使したDeNA井納翔一投手(34)が交渉解禁となった6日、ヤクルト、巨人と交渉の席に着いた。宣言残留を認めているDeNAを含めた3球団との交渉を終え、巨人入りが最有力となった。「ハマの宇宙人」としてプロ通算50勝を積み上げてきた本格派の右腕。「進撃の宇宙人」として新天地に挑む。

  ◇   ◇   ◇

FA交渉解禁日に繰り広げられた争奪戦の中で、井納が2球団との初交渉に臨んだ。DeNAのファンフェスティバルから都内に場所を移し、スーツ姿でヤクルト、巨人の順で球団首脳と対面した。「できれば早く決断したい。お互い、いい話ができました」と言葉少なに帰宅した。

幼少期の思いがよみがえった。小学時代、初めて東京ドームでプロ野球を生観戦した。父に連れられスタンドで目を輝かせた。かねて「僕の原点だと思う。すごく印象に残っている。プロ野球選手にあこがれたスタートの場所」と話していた。東京・江東区出身の井納少年にとって東京ドームは特別な場所。脳内にインプットされた。

運命の吉報が、岐路に立った自分の進むべき道を明るく照らした。6日の早朝5時すぎ、雅美夫人が都内の病院で第3子となる次男を出産した。あのころの夢、あこがれが鮮明によみがえってきた。高校時代は2年時に甲子園に出場も、スタンドから応援。大学時代も最終学年になってようやくエースを勝ち取った。NTT東日本から27歳でプロ入り。オールドルーキーとして50個の勝ち星を積み上げてきた。

DeNAとの残留交渉を経て、コツコツつかんだFA権の行使を決断した。「来年、35歳。持っていてもしょうがないという部分もある。他球団が声をかけていただければ、そこの球団としっかりと話をさせていただければと思っている」と代理人はつけずに単身で交渉の席に着く意向を貫いた。胸に手を当てて、自分自身に対して正直な道を進む。

補償が不要なCランクとみられる井納は、条件、待遇は重視していない。最有力は巨人。「進撃の宇宙人」が大きな決断に踏み切る。

 

○… 巨人がDeNAから国内フリーエージェント(FA)宣言した井納に交渉解禁日の即アタックを実行した。ヤクルトとの交渉後、都内ホテルで大塚副代表が約1時間、初交渉に臨んだ。セ・リーグ3連覇と日本一奪還に向け、先発でも中継ぎでもフル回転できる右腕の必要性を訴え、2年総額2億円規模と背番号「21」を提示した模様だ。

 

◆井納翔一(いのう・しょういち)1986年(昭61)5月1日、東京都生まれ。木更津総合2年夏にチームは甲子園出場もベンチ外。上武大に進学し、関甲新学生リーグでは4年春秋に最優秀防御率を獲得。NTT東日本を経て、12年ドラフト3位でDeNA入団。1年目の13年から先発ローテ入りし、14年には11勝をマーク。16年は開幕投手を務めた。188センチ、94キロ。右投げ右打ち。