巨人誕生87年目「面白くないと…」社長思う未来図

「Advance」と「Surprise」をこれからのチーム作りに掲げた巨人今村球団社長(撮影・足立雅史)

新時代に融合した「巨人軍」へ-。1934年12月26日に前身の大日本東京野球倶楽部として設立した巨人が、26日に86回目の“誕生日”を迎えた。今季は新型コロナウイルスの影響で入場者数などさまざまな制限の中、リーグ2連覇を達成。来季開幕時のリーグ戦の運用方法も不透明な中、巨人は創立90年、その先の100年に向けて87年目をどう進んでいくのか。19年6月に就任した今村司社長(60)が、未来への展望を語った。【取材・構成=前田祐輔、浜本卓也】

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ペットボトルを開けて水で潤した喉元から、今村社長の思いがあふれ出た。新型コロナの影響もあり、今オフの契約更改はリーグ2連覇とはいえ“バラ色”とはいかなかった。それでも1人の保留者を出すこともなく、全選手がはんこを押した。

理由は明快だった。「真っ先に下げました。選手たちにお願いするのに自分がやらないとだめですから」。自身の報酬の20%返上を申し出て、取締役会で了承を得ていたと明かした。「選手たちは球団の資産ですから。伝統や歴史、当然守るべき背骨というものはある。だが、時代に合わせてスタンスは変えないといけない」。

昨年6月、テレビ局出身者で初めて球団のかじ取り役を託された。日本テレビ時代は「家政婦のミタ」や「ザ!鉄腕!DASH!!」を手がけ、野球中継にも携わった。常にエンターテインメントを届け、世間を明るく照らしてきた。伝統球団でも「面白さ」を追求するのは変わらない。「球場は舞台だし選手たちは役者。そこが魅力的じゃないとだめなわけです」。

直接的な触れ合いが希薄にならざるを得なかった今季、ある大号令をかけた。「絶えず巨人のことを気にしてもらって、つながっている感覚をずっと持ってもらいたい」。多くの人に選手をより深く知ってもらうべく、SNSを駆使した積極的な情報発信を始めた。「みんな祭りに参加したいと思うんです。コロナが収まって、祭りが戻ってこないと熱気は戻ってこない。長いプロモーション期間」。満員のファンと野球を堪能できる日に備え、メッセージの量も質もモデルチェンジした。

球団公式YouTubeの登録者数は37万人を超えた。菅野が投球直後に球速を言い当てる動画は、同サイト再生回数1位の371万回も視聴された。2位は田口の誇張ものまねと、プレー時には見せない表情で、硬軟織り交ぜた動画を届けた。

今村社長は「野球を知らない人でもこんなことできるんだとか、形態模写みたいなのが面白いと普遍性を持てる」と評価しつつ「でも、ですね」と首を横に振った。「野球を知らない人にも見てもらわないといけない。動画は子どもたちがマネしたがるかが基本ですから、面白いかどうか。ユーチューバーやゲームクリエーターが子どもたちの夢の業界なんです。それと伍(ご)して戦うには、野球選手がキラキラしていないといけない。若い人たちのあこがれになってほしい」。

表現手段の多様化が進む今、選手にも「差別化」を求めた。「ヒーローインタビューやメッセージも武器。自分のものを磨けと言っています」。お立ち台で「体が小さいのでご飯いっぱい食べます」と言った松原には「毎回言うように」と指示。初完封した畠とバッテリーを組んだ岸田には、右翼から運動会の徒競走で流れる曲をBGMにサプライズ登場させた。「松原は2回目に言い忘れたからつまらないインタビューになってしまいました。岸田は全力疾走から転んで笑いを取って『鼻息プンプンの岸田です。キッシーって呼んでください』と言えばうけるのにスター面をして手を振って出てきたんですよ」と言いながらも、どこかうれしそうに目を細めた。

日テレでのプロ野球中継を担当時、葛藤と戦っていた。「何万人の人に見てもらっているのになぜこんなことしか言えないのだろう」と、ヒーローインタビューの原稿を書こうとし、却下された。その体験が今も脳裏に残る。「今、小学校で野球の話題をしている子がどれだけいるか。僕らが子どものころとは明らかに違う。でも何かのきっかけで興味を持つ可能性がある。それが田口や菅野の動画かもしれない。何でもいいんです。1度野球を見てみようという人が増えてほしいとすごく思います」。

球団創設86年。常勝と人気を両輪に、球界の盟主としてプロ野球界をけん引してきた。技術革新により変化する時代にコロナ禍が重なり、未来は不透明かつ不鮮明だ。どんな巨人であるべきなのか。「テレビ局だったからかな、面白くないとだめだと思うんです。サプライズがないと。すごいなというのが原点。驚きのある野球界であってほしいし、驚かせるような選手であってほしいです」。予定の倍の時間を超えたインタビューをそう締めくくると、空になったペットボトルを手に笑顔で席を立った。

◆巨人公式ユーチューブ再生回数トップ5

▼1位:371万回「菅野智之投手、驚異の『感覚』」=自ら投じた球の速度を的中させるだけでなく、宣言した球速通りに投じるスゴ技を披露。

▼2位:369万回「田口投手 誇張ものまね11連発 原辰徳監督に披露!」=田口が披露するモノマネに原監督も興味津々。

▼3位:359万回「元木ヘッド、イジられすぎ問題」=試合前の円陣で選手にイジられる元木ヘッド。

▼4位:321万回「エース菅野絶賛!戸郷翔征の『お金が取れるキャッチボール』」=ノーステップで遠投を軽々放る戸郷に驚く菅野と、エースとの初キャッチボールを喜ぶ戸郷。

▼5位:288万回「阿部慎之助監督、ブルペン入り」=自ら捕手として今村の球を受け、直接指導する阿部2軍監督。

※再生回数は12月25日時点