野口雄光さん音響室から応援団と共闘 日本一に感慨

ペイペイドームで録音された応援歌を音響室から流していたスタッフの野口雄光さん

<支えタカとよ:スタッフの野口雄光さん>

コロナ禍の特別なシーズンで、ソフトバンクは3年ぶりのリーグ優勝、4年連続日本一を果たした。無観客でのスタート、最後も通常の半分ほどしか観客を入れることができなかった本拠地ペイペイドームも、例年とは違う対応を迫られた。ソフトバンクを支える人々にスポットを当てる、随時企画「支えタカとよ」。今回はドームでファンを盛り上げるために、陰から支えた3人を3回連載で取り上げる。

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新型コロナウイルスの飛沫(ひまつ)を防ぐため、今季はトランペットなど鳴り物での応援ができなかった。そんな中、ペイペイドームでは録音した音源で選手ごとに応援歌を開幕3戦目から流した。右翼席の応援団の代わりに、応援歌を流していたのが、本塁後方の音響室にいるスタッフの野口雄光(たけひこ)さん(46)だ。

無観客でもなるべく通常と同じ状況を作ろうと、球団は開幕が延期となっている間に私設応援団にトランペットや太鼓を演奏してもらい、老若男女10人ほどをスタジオに集めて音源を製作した。野口さんは「グラシアル選手はこのボタン、周東選手はこのボタンという感じで1軍野手26人とチャンステーマ4種類、ほかにも拍手など50個くらいボタンがあります」と説明してくれた。

本塁後方の部屋にいる野口さんは、大きな機材に囲まれて試合を目視できない。中継モニターの画面で状況を確認する。「選手の応援歌間違いは絶対にできません。毎日、攻撃時はまばたきもせずにというくらい1球1球見逃せない」と緊張感たっぷりの仕事だ。

これまでも球場に手伝いに来ることはあったが、今シーズンは初めて「応援歌係」としてフル参加した。「選手のストレスにならないように、お客さんに喜んで参加してもらえるように」と改良を重ねた。7月10日から観客が入り、私設応援団も7月21日から活動を再開。右翼席から、録音した応援歌に合わせて太鼓がたたかれたが、初めの1カ月は音源と太鼓のズレが大きく、試行錯誤が続いた。

野口さんは25年間コンサートやライブなどの音響を整える仕事をしてきた。その知識を生かし、新しく外野席にスピーカーを置くなど工夫した。観客が増えていくに合わせ、応援もスムーズになった。チャンステーマなども、外野の応援団から球団の担当者を通じて指示を出してもらった。

私設応援団「九州鷹狂会」の代表吉原秀貴さん(41)は「ファンのみなさんからも、盛り上がったよと言われた。今季はまったく応援活動ができない球団もあった中で、ホークスは早くから活動再開させてもらった。こういう状況の中、球団と協議して、やってよかった。日本一にもなれましたし」と話す。私設応援団と球団が一体となって「ウィズコロナ応援団」を結成した。陰の応援団長となった野口さんは「来年はできるなら普通通りがいいですよね」と笑った。

4万人満員のペイペイドームで、生のトランペット演奏に合わせファンが大声で声援する-。そんな日常が1日も早く戻ることを祈りつつ、この状況でも安全により楽しく応援できるよう、来季へ向け準備を進めている。【石橋隆雄】