DeNAとコントレイルの未来/番長&矢作師対談2

会話を交わすDeNA三浦監督(左)とJRA矢作調教師(撮影・横山健太)

「ハマの番長」ことDeNA三浦大輔監督(47)と、昨年の3冠馬コントレイルを管理するJRA矢作芳人調教師(59)の対談第2回。チームとして23年ぶりの優勝を狙うベイスターズと、競馬界の主役としてさらなるG1制覇を目指すコントレイルの未来について、2人が語った。【取材・構成=鈴木良一】

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三浦 コントレイルが出走したジャパンCはファンが見たい夢の対決が実現し、エンターテインメントとして盛り上がった。ファンがあってのプロ野球。僕はファンの人が見たいプロ野球でないとだめという思いもある。だから、余計にどきどき見ていました。

矢作 そう言ってもらえてうれしいです。僕も「3強」とかに心躍らされて競馬が好きになったので、ファンのために使ってあげたいなと。負けたことは悔しいですけど、出したことに悔いはないです。

三浦 ジャパンCは最初から頭にあったのですか。

矢作 ありましたけど、菊花賞のレースを見たらちょっと無理だなと。これは今まで誰にも言っていない話なんですけど、菊花賞後に福永と相談したんです。そうしたら「先生、有馬記念はやめてほしい。有馬記念だと自信はない」と。

三浦 自信がない。

矢作 馬場の重さとコース形態なんですけど、彼いわく「中山の2500メートルというのは東京の2400メートルと100メートルしか距離が変わらないのに、急に長距離レースになる」と。菊花賞で苦戦したのは適性ではなかったからで、もうそういう長距離的なレースは使ってほしくないと。僕もあまり適性はないと思っていたので、100%なくなった。

三浦 アーモンドアイには負けましたが、コントレイルがどう進化していくのかが楽しみになりました。

矢作 楽しみといえば、もうすぐキャンプ。方針は決まっているのですか。

三浦 1日の流れを考えています。その日はバッティングに特化する日にしたりとか、今までは「平均的にバッティングも守備も」としていた1日を、ちょっと変えてみようかと。

矢作 いいですね。

三浦 めりはりです。バッティングをする日もあれば、とことん守備をする日も作りたい。頻繁に1、2軍の選手たちを交流させ、いろんなコーチがいろんな選手をいっぱい見られるようにもしたい。

矢作 ファンとして、戦力はほぼ昨季同様だと感じています。ソトとか残ってくれたのは大きいし、出ていった選手を補う候補はいくらでもいるでしょう。

三浦 新戦力は出てきますよ。昨季も筒香が抜けて、佐野が出てきた。

矢作 神里とか桑原とかにはすごく期待していますし、投手陣でもまだまだ伸びそうな素材がいる。

三浦 その見極めをキャンプでしないといけない。

矢作 皆さんが不安を感じているところが、逆に楽しみですね。調教師だって超良血馬をそろえても、みんながみんな走らない。何億円出しても走らない馬は走らない。そんな中で、地味な血統の救世主みたいな馬が出てくるんです。

三浦 やってやろうという気持ちはありますよ。なんかやってやろう。絶対やってやるんだという気持ちがどんどん湧いてきます。

矢作 言いづらいでしょうけど、特に伸びてほしいという選手はいますか。

三浦 細川は2軍でタイトルを取り、1軍で結果を出さないといけない立場です。投手でいえば阪口、京山、中川の同年代が1軍でもう勝負しないと。

矢作 森、どうです。

三浦 いいですよ。あのスピードはDeNAにとっても大きなスキルの1つ。まだやらないといけないものはいっぱいあるけど、1年目としては抜群でした。ここ2、3年で1軍に定着する選手になってもらわないと。それだけのものは持っています。

矢作 チームも走ってほしいですね、もう少し。

三浦 走れる選手は積極的にトライしてもらわないといけないし、「走れる」「つなぐ」という選手がポイントになるのかなと。打つ選手はそろってきていますから、それをつなぐ選手が非常に重要になる。コントレイルはどうなっていくんですか。

矢作 どこまでいっても彼のベストは1800~2000メートルと思っています。本当はドバイターフを使いたい。レースは開催されるかもしれませんが、なかなか難しいところもある。今のところ、春は大阪杯で始動し、宝塚記念。秋は可能であれば3つに挑戦したいと思っているんです。

三浦 「3つ」ですか。

矢作 天皇賞、ジャパンC、有馬記念。で、引退。さっき言ったような理由で昨年は有馬記念を使わなかった。ただ、やっぱり、日本人の競馬ファンは有馬に特別な感情を持っているじゃないですか。

三浦 1年を締めくくるって感じですよね。

矢作 それがあるレースなんで、なんとか今ある課題を克服して、さらに強くなって有馬でも自信を持って出せるぞという馬にしたい。有馬でハッピーエンドが迎えられるようにしたい。ローテもすごくきついですけど、挑戦したいという気持ちはすごくあります。

三浦 2021年は楽しみな1年ですよね。

矢作 ベイスターズは今まで以上に楽しみだし、心配。矢作厩舎としてもコントレイルやデビューする2歳馬の楽しみはあるけど、(女性騎手の)古川がデビューするのが心配で…。ただ心配な半面、日本の競馬を盛り上げるために女性騎手がデビューするのも大事なことだと思うんです。

三浦 頑張ってほしいですよね。ところで…うちの馬はどうでしょうか。

矢作 どの馬ですか。いっぱいいるんで(笑い)。

三浦 しばらく勝利から遠ざかっているんで…。僕、口取りはオフ限定なんで。黒竹賞のリーゼントロックからもう7年です。

矢作 番長の馬は冬場に強い馬にしないといけないですね。12月、1月はフル稼働できるように頑張ります。ぜひ口取りができるようにと思っています。

三浦 ぜひ!

矢作 秋には新聞の1面を矢作厩舎とベイスターズで取り合う形にできれば。また、やりましょう。

三浦 こちらこそ、お願いします。(おわり)

※この対談は緊急事態宣言発令前に、感染対策をして実施しました。敬称略。

◆三浦大輔(みうら・だいすけ)1973年(昭48)12月25日、奈良県生まれ。高田商から91年ドラフト6位で大洋(現DeNA)入団。97年にリーグ最高勝率。05年最優秀防御率、最多奪三振。15年にプロ野球記録の23年連続勝利。16年引退。通算535試合、172勝184敗0セーブ、防御率3・60。19年にDeNA1軍投手コーチ、20年に同2軍監督、今季から1軍監督。11年にJRAの馬主免許を取得し、リーゼントロック(JRA6勝)などを所有。

◆矢作芳人(やはぎ・よしと)1961年(昭36)3月20日、東京都生まれ。父は大井競馬の調教師だった矢作和人氏。開成高卒業後にオーストラリアで競馬を学び、84年7月にJRA競馬学校厩務員課程に入学。04年に14回目の受験で調教師試験に合格。19年の年度代表馬リスグラシューなど多くの活躍馬を育て、14、16、20年には全国リーディングを獲得。JRA通算7061戦683勝、うち重賞46勝(16日現在)。川崎球場時代からのベイスターズファン。

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