名参謀入閣オリックスに期待もV予想は…/緒方孝市

オリックスキャンプを訪れた本紙評論家の緒方孝市氏(右)は中嶋監督(中央)、水本ヘッドコーチを激励する(撮影・前岡正明)

広島3連覇監督・緒方孝市氏(52=日刊スポーツ評論家)が同い年の指揮官を訪ねるキャンプ訪問最終回はオリックス中嶋聡監督(52)。緒方カープを2軍監督として支え、中嶋監督の参謀となった水本勝己ヘッドコーチ(52)も参加しての鼎談(ていだん)で緒方氏は「開幕ダッシュ」を期待した。【取材・構成=真柴健、編集委員・高原寿夫】

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緒方氏(以下、緒方) テレビでキャンプ中継見るとリラックスしてやっている印象やね。昨年、2軍監督からシーズン途中で監督になったときは真っ青な顔だったけど(笑い)。今年は余裕ある?

中嶋監督(以下、中嶋) ないよ。監督になって最初に選手に「同じしんどいことだけど、明るくやれたら強くなる」と言った。1軍の試合を見ていてベンチの雰囲気っていうか、どこで野球やっているんだろう? って思っていた。失敗をこわがる、失敗したら(2軍に)落とされるとか。そんなことばかり考えている感じで。

緒方 選手の本来の力を出し切れてないと。

中嶋 失敗してもいい、とは言わんけど。相手とは違うところと戦っている感じで。なんとか雰囲気を変えてあげたいと思ってた。

緒方 俺のスタートもそこから。コーチになったけど、15年間ずっとBクラスで自信がないわけ。勝てないから自信を持てない。意識改革からスタートしたのが野村謙二郎監督時代、俺のコーチ時代だった。中嶋が言ったように「思い切って楽しくやろう」とね。でも勝たないとあかん。今年、どんな野球するんだろうと注目している。

中嶋 言われるのは「力は持っているのに出せない」ということ。どうやったら出せるか。その後押しをしたい。

緒方 昨年のオリックスはAクラスに入ってもおかしくないんじゃないかと思っていた。投手陣、特に若い投手の力はあると交流戦で感じていたからね。強豪ぞろいのパ・リーグで投手力をしっかりしとかんと1年間、戦い抜けない。

中嶋 課題は「カウント負け」とかわしにいく投球。その変化球に意図があるのか。その初球の入りに意図があるのか、と。だから実戦練習でも(ストライクゾーンに)ゴムを引いてみようかと思っている。ボールの高さ、コースとか意識して。

緒方 ストレートの使い方だね。俺の監督1年目、交流戦で日本ハムと対戦したときに中嶋から「いい先発陣そろってるやん」と言われて。「中継ぎ、抑え、苦労しとるんよ」って言ったら「投手で一番大事なのはアウトコース。低めの真っすぐ、第1球目から投げられるかどうか」で先頭打者、そのイニングが決まるって。その言葉は大きな財産になったし、投手コーチにも口を酸っぱくして「先頭バッターの入り方」と言ってきた。2軍監督の水本にも言い続けてたよね?

水本ヘッドコーチ(以下、水本) そうですね。

緒方 その水本が中嶋にお願いされて、オリックスに来たわけやけど。

中嶋 緒方サンが連れていけと(大笑い)。

水本 よお似とるよ。2人がね。よく似てる。広島の2軍監督からこっちに来て話していたら、この2人気が合うなって、すごい分かる。見た目、無愛想な顔なのも同じやな。

中嶋 俺はまだ社交的なところがある(笑い)。緒方サンはない(笑い)。

水本 でも野球に対する考え方とかは本当に似てる。その中でね、助けることができたらなと思う。

緒方 監督って経験したことがある人にしか分からない。中嶋とはお互い18歳から、プロの世界に入って。同じチームになることはなかったけど、同じ世界で過ごした「同級生」として頑張ってほしい。水本がオリックスに行くと聞いてうれしかった。俺が助けてもらったように中嶋を助けてくれるはず。性格が暑苦しいから、うっとうしいけど(笑い)。孤独になる監督としては、気兼ねなくなんでも言える、察してくれる存在は必要。水本は適任だと思うし、それがチームの勝敗にも影響すると思う。順位予想でオリックス優勝にはしないけどな(笑い)。

中嶋 下の方でいいよ。でもパ・リーグは本当に「力対力」。だからAクラスが下の方にボコっていってもおかしくない。

緒方 経験から言えば大きな連敗をしなければ下に沈むことはない。大きく連勝しろというわけじゃない。5割の戦いを意識して、離されなかったら、選手、首脳陣のモチベーションも切れない。

中嶋 そこで投手力やな。優勝するところはベースがそこにある。ウチは、ここ何年かは最初に負けて上がりようがない。最初に勝っておかないと、選手たちも今年もか…ってダメになる。

水本 緒方もそこは意識しとったよね。シーズン始まるときに。

緒方 理想は開幕ダッシュ。正直、5割の戦いを4月いっぱいまで戦えればというのが本心だった。

中嶋 そこで突き放されないことと思うんでね。

緒方 今から中嶋の色を1滴ずつチームに注入していって、染めていかないとね。時間はかかる。でも、1滴ずつキチッと落としていかないと。期待してるんで頼みますよ。

◆水本勝己(みずもと・かつみ) 1968年(昭43)10月1日生まれ、52歳。岡山県出身。倉敷工、松下電器を経て89年、ドラフト外で広島入団。1軍出場のないまま、2年で現役引退。その後はブルペン捕手を長く務め、16年に2軍監督に就任した異色の経歴を持つ。緒方監督時代の広島3連覇をファームから支えた。今季、オリックスのヘッドコーチに就任。