規制イライラ、原監督に格の違い/宮本氏&和田氏1

2月18日、巨人原監督(右)と談笑する宮本慎也氏

<コロナ禍のキャンプを振り返る(上)>

日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏(50)と和田一浩氏(48)が、コロナ禍で行われた春季キャンプを振り返ります。ベテラン遊軍・小島信行記者との、忖度(そんたく)なしのクロストーク。2回で送ります。

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小島記者 キャンプ取材、お疲れさまでした。今年はコロナでいろいろな規制があって大変でしたね。

宮本 規制は仕方ないけど、本当に意味がある規制なのか疑問が多かった。精神的にイライラすることが多かったなぁ(苦笑い)。

和田 本当ですね。各球団によってルールが違うから、ゴチャゴチャになってしまいました。余計な神経を使った分、疲れたような気がします(苦笑い)。

小島 こういうときこそ、NPBが各球団の意見を調整して統一してくれればよかったんですが…。

宮本 みんなそう言ってた。PCR検査にしても球団によって期間が違う。事前申請があったりなかったり、取材人数も違う。PCR検査も最後は慣れたけど、なかなかツバが出なくて…。無理やり出そうとしたら歯茎から血が出て、ピンクのツバが出ちゃったよ。別の病気が発覚するんじゃないかと思った(笑い)。

和田 ゴルフ禁止や外食禁止の球団が多かった。あれじゃ、ストレスたまりますよね。もともと健康を維持するためにコロナにかからないようにしてるのに、やりすぎるとストレスで別の病気になっちゃいそう。

小島 NPBも何かあったときに責任を取りたくない、だから各球団に投げたとも思われかねない。

宮本 最近の世の中のおかしなところ。本来、責任が伴うところが、責任を取りたくないから必要以上に厳しくしたり“ウチとは関係ありませんよ”として率先してやろうとしない。「事なかれ主義」がはびこる要因。野球界だけでなく、今回のコロナ騒動でよく分かった。

和田 その点、巨人の原監督は違った。評論家を見つけると、グラウンドや室内に招いてくれる。やっぱり近くで見ないと分からない部分があるから助かりましたよね。

宮本 特にブルペンなんか、後ろから見ないと球筋とか分からない。横から見てもなぁ。原監督は後ろから見せてくれたもんな。「俺がいいって言ったらいいんだよ」みたいな貫禄がある。監督として実績があるし「格の違い」を感じた。

小島 でも宮本さんは練習はグラウンドで見られなさそうだから、練習試合をやるところを中心に選んで視察してましたよね。

宮本 そうそう。どうせスタンドからしか見られないなら、試合の方がいい。

和田 さすがの読みですね。ボクは練習をじっくり見た方がいいと思って、試合のないところを選んじゃった。阪神に行った時なんて、雨が降ってて室内練習場。遠くからのぞこうとしても、カーテンが引いてあって全く見られない(笑い)。ルーキーの佐藤君のバッティング練習は見たかったんだけどなぁ。

宮本 すごそうだぞ。フリー打撃で最初は逆方向に打っていた。ライトからレフトに風が吹いていたせいもあるんだけど、打球がスライスして左方向にギューンと流れていくけど、それで柵越えしちゃう。左打者って、逆方向の打球をスタンドに入れようとしたら、きれいな縦回転のスピンをかけて、いい角度で打球を上げないとなかなか入らない。こすったような感じでも柵越えしてた。すごいパワーだった。

和田 見たかったなぁ。ボクは動画とか映像でしか見てないけど、打ち方はまだ粗削りなイメージ。大学時代の成績もあまり打率が高くなかったし、そこが少し気になってた。シーズンに入れば厳しく内角を攻められ、それが気になって外が打てなくなる可能性はある。でも厳しい攻めをされるのは強打者の証し。ルーキーで厳しく攻められたら、それはそれですごいですよね。

小島 今年は外国人選手がほとんどいなかったから、佐藤のパワーは際だって見えましたね。

和田 来日している新外国人では、広島のクロンがグリップが体から離れていかないスイングで、ボクの好きな打ち方をしてました。外の変化球に我慢できれば打つかもしれませんよ。

宮本 いろいろと聞いたけど、性格は真面目だって。でも少し真面目すぎて、それほど明るくなさそうなタイプのように思えた。聞く耳を持っていないと日本で成功するのは難しいけど、神経質すぎても環境の変化についていけなくなる。外国人はプレーだけで判断できないから難しい。今年は特に見られていないし、話を聞く機会も少なかったし…。

小島 分からないと言っても、お二方とも選手の能力診断は当てますよね。去年、ビックリしたのはオリックスのアダム・ジョーンズ。技術は間違いないけど、日本の野球をなめてるような気がするってとこまで当ててました。確か寒い日にフリー打撃をするとき、たき火で手を温めている姿を見て言ってましたよ。

宮本 ハハハ、たき火で手を温める時間や回数が多かったから言ったんでしょう。さすがにそれだけじゃ分からないですよ。ただ、フリー打撃の最初で、セーフティーバントを3、4回やっていたんだよ。そんなのやるようなタイプではなさそうだし、寒くて手が痛くてやっているのかなぁ、って。あの実績で日本に来るんだから「なんでなんだろう」って探る気持ちで見ていた。そういう目で見ているから、たき火に当たる姿を見て感じちゃったんだと思う。フリー打撃を素手で打つから仕方ないんだけど(笑い)。

和田 でも宮本さんって、よく顔つきとかしゃべり方とかで判断しますよね。当たるからビックリする。

小島 そうなんですよ。さすがに記事にするときは“顔判断”で書けないです(笑い)。「たき火」も「セーフティーしてた」も根拠としては紹介していませんが、確かに言ってましたよね。でも今年は体を絞って来日しているって聞きましたよ。

宮本 それなら楽しみ。今年は見てないけど、本場メジャーの力を見せてくれればいいですね。

小島 そういう人間の細かい行動って、観察すると面白いですよね。和田さんはキャンプ期間中、コンビニのポリ袋を持って買い物しててビックリしました(笑い)。

和田 長くいると、ホテルの部屋にいっぱいたまっちゃうのが嫌なんですよ。すぐ近くのコンビニに行くんだから持って行くだけですよ(笑い)。

宮本 ベンちゃん(和田の愛称)って、ちょこちょこと意外な行動をするんだよなぁ。豪快だけどきちょうめん。だからバッティングを語るときも、やたら細かいとこを見るもんな。戦争で捕虜にしても、悪いことしないし安心なタイプ。

和田 ボクのことは細かく観察しなくていいです(笑い)。ただ、ルールを守らずに後ろ指をさされるのが嫌なんですよ。

小島 宮本さんも相当、細かいとこを見てますよ。でも捕虜にしたらすぐに独房に入れて監禁しないと脱走を企てるタイプですね(笑い)。次回も細かい指摘、よろしくお願いします!(つづく)