<寺尾で候>
日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。
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1年前の4月下旬、NPB(日本野球機構)とJリーグが合同で開催する第6回目の「新型コロナウイルス対策連絡会議」では、史上初の無観客試合で開幕する方針が固まった。
あれから1年、この会議も第30回を数えて、プロ野球は再び「無観客」を強いられた。東京、大阪、京都、兵庫に発令された緊急事態宣言に伴う無観客の要請にコミッショナーの斉藤惇は異議を唱える。
「我々は相応のコストをかけて徹底的な防疫態勢と検証を繰り返してきた。統制された下で行われるプロ野球と、監視されずに飲食するグループと一律に全く同じ条件で有観客をとどめてしまうのは、どうしても納得がいかない」
無観客試合の受け入れを「苦渋」「例外的」な選択とした斉藤は、さらに「興行を強制的に止めるわけだから、政府、自治体も対策の検証をした上で、データ分析に基づいた細かい施策の適用が求められる」と要望した。
すでに緊急事態宣言の延長を示唆する感染症の専門家もいて“出口”は見えないままだ。この状況では球団経営は売上高が激減した昨シーズンに続く大きな損失を被って窮地に立たされるのは必至だろう。
さらに苦境が続けば選手の年俸削減にも踏み込まざるを得なくなってくるかもしれない。昨年は経営者側から選手会に対し、試合数が減少した場合でも削減に踏み切らない旨の説明が行われたようだが、この緊急事態宣言が繰り返されることになれば先行きは不透明だ。
現行の「野球協約」「統一契約書」には、ウイルス感染、天災など不測の事態を想定した減額制限が明記されていない。連結決算の企業論理からも、収束の見通しが立たない以上、この条文の改定は今後の課題になってくるだろう。
昨年のオーナー会議で議長役を務めたDeNAオーナーの南場智子が「現在の状況が苦しいというのは共有されている。その中の1つの要素として話題には上がった」と語ったが、今年のトップ会議では遡上(そじょう)に上がるかもしれない。
新型コロナ感染拡大をコミッショナーの斉藤は「国難」と表現してきた。「我々はこの1年を無駄には使っていない」。最大の有事といえる抜き差しならない事態に、そのかじ取りが注目される。【寺尾博和編集員】(敬称略)