西武内海哲也投手兼投手コーチ(39)の1日は長い。午前は選手。入念なウオーミングアップをして体を温めると、投手練習のメニューである体幹トレーニング、そして自らストップウオッチを握りながら、ポール間をインターバル走で追い込む。この秋季練習では投球練習こそ行わないが、例年走り込んでいる時期。プロ19年目に向けたこの秋も変わらない。
秋季練習2日目となった4日。同僚だった仲間からは「内海コーチ」と呼ばれ、照れくさそうに笑う。「ふざけて『内海コーチ』って言っていただけますね。基本的には午前中、選手としてのやりたいことが終わるまでは選手中心。治療も全て終わってからコーチ」。午後はコーチで、変身アイテムはノックバットとマスク。サブグラウンドでアメリカンノックを受ける若手投手陣に声を張り上げた。選手を呼ぶときは、名字ではなく下の名前で。「こういうのも勉強だし、充実しているなという感じです」と違った汗を流す。
おぼろげながら理想のコーチ像はある。「(巨人時代のコーチである)小谷(正勝)さんみたいな感じです。教わっていたんですけど、初めは見る。無駄なことは言わない。見て、じっくり見て、そっから自分が気になったことをアドバイスしていけたらいいかなと思います」。5球団を渡り歩いた名伯楽の姿を追い求める。ブルペンではノックバットを片手に、若手が繰り返すシャドーを黙って見つめた。
これまでも後輩投手には助言を送ってきた。今季は高卒3年目右腕・渡辺勇太朗投手が急成長した。コーチという肩書を得て、さらに踏み込んだアドバイスを送れる。「肩書をいただいたんで、より言えるかなと思います。やっぱコーチの方がいたんで、僕がしゃしゃり出るところじゃないなと思いましたし」。先輩投手としてではなく、コーチとして、選手の動きに目を配る。
10月下旬、フェニックス・リーグに参加中の宮崎で兼任投手コーチの打診を受けた。西武移籍3年で2勝。戦力外の可能性も頭をよぎっていた。「自分から辞めるっていうのはちょっとまだ踏ん切りがなかった。いろいろ葛藤があった中でそういう(兼任コーチの)話をしていただいて。年齢的にも学んでいきたいと思っていたので、すごいありがたい話をいただいたと思います」。コーチ業務を終えるころには、すでに日が暮れていた。それでも、新たな日々にやりがいをかみしめている。【栗田成芳】