【緒方孝市】阪神、来季は逆境を力に どれだけ悔しさ感じるか重要

阪神矢野燿大監督(2021年11月24日撮影)

<背水矢野虎 来季Vへの具体的方法論>(7)

日刊スポーツ評論家陣が提言する「背水矢野虎 来季Vへの具体的方法論」。第7回は広島3連覇監督・緒方孝市氏(52)はカギとして「逆境力」を挙げ、あえて精神面を強調した。【聞き手=編集委員・高原寿夫】

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阪神の来季は厳しいシーズンになると覚悟しなければならない。「今年こそ」という阪神ファンの期待、思いを結果として裏切ってしまった。それを取り戻さなければならないからだ。

自分も経験がある。広島監督就任1年目の15年だ。前年まで2年連続Aクラスに入り、カープ人気は大いに高まっていた。そこに黒田博樹、新井貴浩がチームに復帰。ファンの期待の高まりをイヤというほど感じていた。しかし15年の結果は最終戦に中日に0-3で負け、4位に沈んだ。

ファンの期待をどう取り戻すか。そのオフからそればかり考えていた。答えは「勝つしかない」。3連覇はそこがスタートだった。監督、選手を含め、阪神全体がどれだけ悔しさを感じているか。気持ちの面は重要だろう。

2位に終わったが優勝していてもおかしくない成績だったのは事実。監督、選手はよくやったと思う。だが頂点には届かなかった。その悔しさを個々がどう感じ、外部から批判される「逆境」を力に変えていけるか。

ヤクルトが日本一になれたのは2年連続最下位という屈辱を味わったからだ。同じ野球人として、どれだけ悔しい思いをしたか分かる。それをバネにしたのだ。逆境を力に変える「逆境力」を持てるかどうか。繰り返しになるがそこが大事だ。

具体的な課題は、いろいろある。失策数の問題、ブルペンの再構築、野手では調子の波の激しかった佐藤輝の2年目など、だ。佐藤輝に関して言えば調子を落としていると周囲が感じたとき、もっと早く手を打てればよかったと感じる。

シーズン中の評論でも「状態が悪ければ外すしかない」と言ったけれど、調子が落ちていると感じたとき、1度休ませるのか、2軍で走り込み中心などで鍛え直すのか。そういう素早い対応が必要だったのではないか、と思う。

退団が決まったサンズにしても中盤から打てなくなる昨季と同じ失敗を繰り返した。もちろん本人の責任だがベンチとして、どう対策を立てていたのか。検証は大事だ。

状況に素早く対応することの大切さは采配でも同じだ。1つの戦い方では勝てない。選手の状態、試合そのものに必ず“流れ”がある。監督を含めベンチがその流れをどう感じ、どう手を打っていけるか。

「勝負の3年目」に負けた矢野監督も相当な覚悟があるはず。4年目を任せてもらったことを意気に感じて、今季の悔しさを糧に現役、コーチ、2軍監督から積み上げてきた経験を最大限に発揮するときだ。