阪神梅野隆太郎 若虎軍団をV奪回に導くカギ 鳥谷敬氏の答えは?

対談を行い、笑顔でガッツポーズする阪神梅野隆太郎(左)と鳥谷敬氏(撮影・前田充)

トリさん、打ちまくって優勝します! 阪神梅野隆太郎捕手(30)が大先輩に元日の誓いを立てた。22年から日刊スポーツ評論家に就任した元阪神、ロッテの鳥谷敬氏(40)と初対談。国内FA権を行使せず残留した理由は? 若虎軍団をV奪回に導くカギは? スランプ脱出の秘策とは? 今季の3大目標からリーダー論、打撃論まで久々の再会で語り尽くした。【取材・構成=佐井陽介】

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虎は若いチームだ。代打を主戦場とする40歳糸井、外国人選手を除けば、投手は31歳西勇、野手は30歳梅野が最年長クラスとなる。19年限りで鳥谷氏がロッテに移籍。20年オフには藤川球児氏が現役引退し、福留は中日、能見もオリックスへ移籍した。精神的支柱が次々に姿を消して迎えた昨季、新型コロナウイルス禍が収まらない環境下で、梅野らリーダー格には少なからず苦悩もあったようだ。

 

鳥谷 今のチームの雰囲気はどんな感じかな。

梅野 雰囲気は良いですよ。ただ、例えば自分たちがトリさんや先輩たちに不調の時はどうしたらいいのかとかいろいろなことを話して見つけていく形とかはなかなか…。自分も後輩にアドバイスできる立場ですけど、トリさんたちから教わったことをアドバイスできるだけの関係はまだ…。コミュニケーション的には長いシーズンを乗り切る上ではまだまだ少ないかなと思います。コロナ禍でご飯に行けなかったりして、そこが本当に難しいです。

鳥谷 グラウンドで伝えていかないといけないのは確かに難しいね。

梅野 グラウンドで伝えるといっても、やっぱり自分の練習もしないといけないので…。当たり前ですけど、ルーキーはまだ怖さを知らないもの。もっとシビアな世界なんだと、自分が思っていた以上に先輩たちはそういう風な戦い方をしていたんだと、今になって気づくことがあります。トリさんや(福留)孝介さんは自分たちにこんなことを思っていたんだろうなと、まだまだ子供で厳しさを知らなかったんだなと、ちょっと自分に転換して考えるようになっています。

鳥谷 チームをまとめないといけない立場になっているんだね。今年はもっとこうしていきたいというイメージはある?

梅野 やっぱりコミュニケーションになりますね。技術的なことを教え合うというよりはメンタリティーの部分で。テル(佐藤輝)にしても良い時は持ち上げられたけど、打てなくなった時期もあった。去年いろんな経験をした中で、いろんな話をすることがすごく大切になる。試合に出ている以上、1年目も10年目も同じ責任感でプレーした方がいい。そこを少しでも伝えていけたら。自分も先輩方からたくさん引き出しをもらってきた。それを伝えていけたらと思います。

鳥谷 年齢が違うと難しいよね。自分なんかも40歳と20歳で話したら、物事のとらえ方、考え方が全然違う。1つを伝えるにしても、いろんな方向から伝えないと、伝わり方が違ってくる。年齢を重ねれば言わなければいけない仕事がどんどん増えるけど、そこら辺は勉強していくしかないのかもしれない。自分の場合はひたすら本を読んで、人を納得させられるモノを何か1つ、同じことでもいろんな分野の話から伝えていけたらと思っていた。人って、聞いたことがない話は頭に残るから。そういうやり方も1つかなと思う。

(続けて)

ただ、個人的にはまだみんなそこまで背負いすぎないでいいと思うけどね。ミスが出ることとかも背負いすぎじゃないかな。グラウンドでその選手を使うと決めているのは監督、コーチ。そこで出た結果がダメなら使わなければいいわけだから。自分はロッテではそこまで背負っている感じはなかった。(阪神時代は)もっと楽にできたな、背負いすぎだったなと感じた。年齢が上がって役割があっても、そこまで背負わず自分のことをしっかりやった上で、気になることがあれば言えばいい。みんなが好き勝手にやるのがいいわけじゃないけど、まずはちゃんと自分のことをね。プロ野球選手は球団から「いらない」と言われたら終わり。毎年10人入れば10人出ていく世界なんだから。阪神という注目度の高いチームにいたらなかなかそういう考え方ができないのは、自分もよく分かるけど。それにしても久々にしっかり話して、梅ちゃんも一人前に成長しているなって偉そうに思っちゃうな(笑い)。

梅野 去年は自分にしろ(大山)悠輔にしろ、シーズン後半に自分たちが試合に出なくなってしまった時に正直、(チームをまとめる)難しさは感じていました。ただ、トリさんの話を今聞いて、確かに背負いすぎていたかもしれないなとあらためて思いました。もう少し楽にいっても良かったのかもしれないですね。

鳥谷 監督、コーチの意向もあるから一概に楽にいけとは言えないけど、外から見ている限り、この言い方が正しいかどうか分からないけど、まだみんな背負うところまで立場を確立していないんじゃないかな。梅ちゃんもそうだし、大山選手もそう。それは5年10年レギュラーを張って、やっと背負えるものなのに。背負ってくれる年上の人がいなくなってしまった状況もあるんだろうけど、まだ背負う前の段階で急に背負っちゃっている気がする。まだ背負うところまでは来ていないけど、背負えるように頑張ろうというぐらいの方が、若いチームの雰囲気の中では楽になれるんじゃないかな。自分も以前は背負いすぎていたなと感じるところがあったから、そう思う。まあ、去年苦しんだ経験は必ず力になるよ。ずっと試合に出続ける難しさを知れば、ずっと出たい気持ちも出てくるしね。

梅野 やっぱり年齢が上がると、球団の方から話される言葉の重みも変わってくるじゃないですか。それまでは契約更改の席で球団の方と長く話すことはなかったけど、今はじっくりしゃべっていろんな思いを伝え合う形になってきている。とはいえ、プレーしている時はあまり背負いすぎずやっていこうと思います。

鳥谷 去年を振り返ったら、ヤクルトもオリックスもそうだけど、ベテラン、中堅、若手のバランスが取れたチームが優勝している。なかなか外に出てみんなでコミュニケーションを取れる時代じゃないからこそ、ベテランの力も必要なんだなと感じた。若い選手が「どうですかね」と聞いてきた時にヒントを多く伝えて、スランプを2週間から1週間に縮めるだけでもチームにとって大きいからね。そういう役割はまだ30歳では難しいかもしれないけど、ベテランがほとんどいないことを考えても仕方がない。今の自分ができることを探せば梅ちゃんの価値も上がるし、チームも良くなる。仕事は多くなるけど、いつかは野球を辞めるんだから、今のうちにしっかり苦しんだらいいんじゃないかな。これから強くなろうとしているんだから、ベテランがいない状況もプラスにとらえてほしい。

梅野 個人的にはこれから楽しみの方が強いんです。本当に発展途上のチームなので。年上の人がいない状況も違う見方をすれば、自分たちがもっと上になった時、若い選手が中堅になってバランスが出来上がってくる。自分たちが35歳になった時に近本や悠輔が32歳ですからね。今のヤクルト、オリックスと同じパターンを作れれば、今年も含めていろんなことを成し遂げられるチャンスはあるのかなと思っています。

鳥谷 チーム全体を見れば、スアレスが抜けてしまったね。去年は9回打ち切りだったけど、今年は延長戦があるかもしれない。そうなった時によりダメージが大きいのかなと思う。

梅野 いや~スアレスは存在がデカすぎて…。去年は岩崎と8、9回が固定されていたから、捕手としては逆算しやすかった。7回までをどうしのぐか、でしたから。今年は新外国人投手がどうなるのか、岩崎が9回に回るのか、まだ分からない。スアレスがいたから8回岩崎が強みでもあった。スアレスがいなくなった不安は正直あります。

鳥谷 去年ルーキーで活躍した中野選手、佐藤輝選手は今年も楽しみだね。

梅野 中野は今年も思いきりやってほしいですね。守備の方は打者の特徴、打球方向が分かってきただろうから、いろいろポジションも動いてほしい。負けず嫌いなところも出してやってほしい。テルは去年、大きな波のあるシーズンを経験した。最後は試合に出られない悔しさもあった。1年目に出来た選手の2年目は期待以上に出来なかったらキツくなってしまうけど、そういうことはあまり考えずにやってくれたらと思います。性格的にあまり心配していませんけどね。

 

◆鳥谷敬(とりたに・たかし)1981年(昭56)6月26日生まれ、東京都出身。聖望学園3年夏に甲子園出場。早大2年春に東京6大学史上最速タイで3冠王。03年ドラフト自由枠で阪神入団。04年9月からの1939試合連続出場はプロ野球2位、17年9月には通算2000安打を達成した。19年限りで阪神を退団し、20年3月にロッテ入団。21年限りで現役引退。13年WBC日本代表。ベストナイン6度、ゴールデングラブ賞5度。180センチ、79キロ。右投げ左打ち。

◆梅野隆太郎(うめの・りゅうたろう)1991年(平3)6月17日、福岡県生まれ。福岡工大城東-福岡大を経て13年ドラフト4位で阪神入り。1年目から92試合に出場。17年に正捕手の座をつかみ、18年から3年連続ゴールデングラブ賞。19年4月9日DeNA戦では阪神捕手で初のサイクル安打を達成。21年夏の東京五輪では侍ジャパン金メダル獲得に貢献。21年オフは同年に初取得した国内FA権を行使せず、3年契約で残留した。173センチ、75キロ。右投げ右打ち。