【鳥谷敬】三塁守った阪神佐藤輝明に「鉄人のススメ」素手での捕球避け、投げるための捕球意識を

阪神対楽天 2回表楽天1死、佐藤輝は田中和のファウルを素手でつかむ(撮影・加藤哉)

日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)が12日、古巣阪神の沖縄・宜野座キャンプを初めて訪問し、三塁佐藤輝明内野手(22)に「鉄人のススメ」を説いた。プロ野球歴代2位の1939試合連続出場を誇るレジェンドが練習試合の楽天戦を視察し、三塁で先発した大砲に守備面で2つの改善ポイントを提案。長年チームの顔となれる素材と認めた上で、1年間フル稼働する秘訣(ひけつ)を伝授した。【取材・構成=佐井陽介】

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佐藤輝明選手の三塁守備をチェックさせてもらって、少し気になるポイントがありました。2回1死、6番田中和基選手が打ち損じたファウルの処理の仕方です。三塁コーチスボックス付近に切れていくゴロに対して、利き手である右手でキャッチに行きました。これはやや危険なプレーでした。

もちろん、力のないゴロだったから素手を選んだのでしょう。とはいえ、場合によってはボールや地面で指を突いてしまうかもしれません。重傷を免れたとしても、違和感が数日間続いてしまうかもしれません。佐藤選手は誰の目にも近い将来、チームを背負って立つ能力の持ち主です。少しでもいい状態で1年間フル稼働するためにも、ケガのリスクはたとえ0・01%でも減らしてほしい。細かい指摘になってしまいますが、ああいう打球にもグラブを使った方がベターではないかと考えます。

1回2死二塁の三塁守備にも改善点を感じました。三遊間のゴロを一塁にショートバウンド送球した場面。体がやや二塁ベース方向に向いたまま捕球したことで、左肩が少し開いてしまったように映りました。もう少し体を一塁方向に向けて捕球できていれば、もっと小さな力で正確な送球を決められていたはずです。そうすれば1年間で体にかかる負担も減らせます。

今回のプレーに限れば、ボールを捕る動作と投げる動作が別々に分かれてしまっていたように感じます。重要なことは「投げるために捕る」ということです。もともとハンドリングがうまく、肩も強いプレーヤー。練習から捕球する際の体の向きを少し意識するだけで、送球の安定性を今まで以上にアップさせられるのではないかと考えます。

現状は今季も右翼が主戦場となりそうです。三塁はあくまでオプションの1つかもしれません。それでもケガとエラーの確率を減らしていく作業は決して無意味ではありません。チームのためにも、三塁再挑戦を希望する自分の将来のためにも、これからますます細部にもこだわってもらいたいと思います。(日刊スポーツ評論家)

◆佐藤輝の三塁出場 昨季は主に大山の休養日や故障をカバーする形で、スタメン12試合を含む13試合守った。守備機会32度で1失策、守備率は9割6分9厘。近大時代に守り慣れたポジションを無難にこなした。三塁デビューは5月2日の広島戦(甲子園)で打順は4番。5回に野村からプロ初の満塁本塁打を放った。阪神新人の4番は17年の大山以来10人目だった。今季の開幕戦に「4番三塁」で先発すれば生え抜きでは昨季の大山以来だが、左打ちの生え抜きに限ると87年掛布以来35年ぶりになる。

〈阪神三塁手のゴールデングラブ賞〉

◆掛布雅之(78、79、81、82、83、85年)三塁手としての6度受賞は、岩村明憲(ヤクルト)と並びセ・リーグ最多。強肩を生かした堅実な送球を武器に、守りでも安定した能力を見せた。

◆オマリー(92年)好打者パチョレックが大洋(現DeNA)から加わり、前年91年の一塁からコンバート。的確に投手に声を掛けるなど、内野のリーダー役だった。

◆鳥谷敬(17年)遊撃の名手が同年3月に本格転向。鼻を骨折しながら守りも懸命にこなした。遊撃に続き複数の守備位置での受賞は、藤田平(遊撃、一塁)に続き球団2人目。