<We love Baseball>
流れた年月を感じなかった。楽天田中将大投手(33)のキャッチボールだ。
相手が球を放る前から、グラブを胸の前に出して構えている。大半の投手は球が近づいてからパッとグラブを出すが、田中将は、まるで捕手がミットを構えるように待つ。「ここに投げて」と的を作ってあげているように見える。
今回2日間だけ、沖縄・金武を訪ねた。他球団やアマ野球の担当を経て、今年から「遊軍」も兼ねている。最後に担当した14年以来8年ぶりの楽天キャンプ。田中将のキャッチボールを見るのは9年ぶりだった。変わらぬスタイルに、うれしくなった。
確か、グラブを前に出す理由は「特に、ないです」と言っていた。少年時代の指導者である昆陽里タイガースの山崎三孝さんは「もともと捕手だった習慣では」と話していた。体に染みついたものは、メジャーに行っても変わらなかった。無意識でも、キャッチボール相手が投げやすいようにという気遣いに映る。
8年もたつと、変わった事の方が多かった。懐かしい顔の多くは、コーチやスタッフになっていた。金武の球場ができた当時、星野監督が「やっと本島に拠点ができる」と喜色満面で歓迎した施設も、ずいぶん立派になっていた。サブグラウンドまで天然芝で覆われ、屋内運動場の工事も始まっていた。田中将のことは「マーさん」と呼ぶ若い記者が増えていた。
時の流れを突きつけられたようで、一瞬、戸惑う。ただ、思い直した。本質まで変わったわけではない、と。キャッチボール相手をいたわる気持ち。「マー君」に込められた親しみの感情は「さん」でも同じはず。今や生え抜き最年長となった銀次は、球場が原っぱのようだった時代から振り込んできた。逆方向中心の丁寧なフリー打撃は変わっていなかった。「優勝して、東北を熱くします!」。純な気持ちも変わっていなかった。【古川真弥】