宮本慎也氏「セオリー大事に自ら守備位置考える」鳥谷敬氏「感性とデータをミックス」/遊撃論3

2017年4月、阪神鳥谷(左)と守備について身ぶり手ぶりで話す宮本慎也氏

<宮本慎也&鳥谷敬の遊撃論(3)>

“守備の華”とも形容されるショート。このポジションで一時代を築いた日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏(51)と鳥谷敬氏(40)による「遊撃論」最終回のテーマは「守備シフト」。

データの活用と同時に、なぜ状況判断力が求められるのか。和田一浩氏(49)も同席し、宮本、鳥谷両氏がシフトに対する本音を明かしました。【取材・構成=佐井陽介、小島信行】

    ◇    ◇    ◇

宮本(以下宮) やっぱり捕手と二遊間はある程度は自分で判断できる、ゲームを支配できる選手じゃないと厳しいよね。この場面だったら2失点はダメだけど1失点ならOKとか、そういう確認ができないとしんどくなる。ヤクルトでコーチをしていた時も困ったもん。相手打者がずっと三塁線に打っているのに、一向に守備位置を変えない選手がいて。「次も三塁方向に飛んでくるとか考えないの?」といちいち言わないといけなかった。

鳥谷(以下鳥) 今は結構、データで守備位置が決まりますからね。そうなると自分で守備位置を考えないでよくなってしまう。打者の打ち方を見て、体重をどういう風にかけようかとか、そういう作業が少なくなっていますね。そういえば、2月に巨人キャンプに行かせてもらった時、ランチ特打を見ていたら坂本がスッとショートに向かったんです。もちろんメニューには入っていなかったと思うんですけど、打球1球1球にスタートを切る練習をしていました。この感覚ですよね。ゴロが飛んでこなくても、打球判断とか反応を確認する姿を見て、こういう選手がずっと成長していけるんだなと思いました。今は「データが出ているからここを守りなさい」だから、反対に打球が飛んだら「データが悪い」となってしまう。もちろんデータは大事だと思います。ただ、選手みんなが初めからデータに頼ってしまうと…。

宮 選手に責任がなくなって、考えなくなってしまうからね。

鳥 たとえば打者と投手のその日の状態を考えて、いつもは内角をカーンと打っているけど今日はファウルになっているから、いつもより少しこちら側に体重をかけてみよう、とか。そういうことを考えなくてもいい環境になってしまっているのは間違いないでしょうね。そういう傾向は打者も同じだと思います。「このコースに来ると聞いていたけど、来なかったです」という発想が選手同士の会話の中で普通に出てくるのが少し寂しいなとは思います。宮本さんはコーチをやられていた時、どういう考えでシフトを敷いていましたか?

宮 自分はあまり大きく守備位置を動かすのは嫌で、どちらかというとセオリーも大事にしましょう、という考えだったかな。たとえば絶対に三塁線を締めないといけない場面でも、データ上は来ないからといって(三塁線を)がら空きにするのはやめていた。今は自分で守備位置とかを考える選手が本当に減ってるから、ちょっと心配。

鳥 何が正解なんでしょうね。今であればオリックスの吉田正尚が打席に立つと、めちゃくちゃシフトを敷くじゃないですか。二塁手も驚くほど後ろに下がるんですけど、それで内野安打が増えたりもするんです。あの吉田正尚を打ち取った緩い打球が内野安打になると、たとえその他の安打は防げていたとしても、投手のダメージは大きいんじゃないかな、と思ったりもします。阪神時代に能見さんが投げていた時は「シフトを敷かず自分で考えてくれたらいいから」と言われた時もありました。

-あまりに守備位置を考えない選手がいたから指示を出すようになったのか、ただ単に傾向と確率を重視するようになっただけなのか…。

宮 本来はいろいろ考えられる人が二遊間にいるものなんですけどね。

-シフトがはまった確率にしても、何%に達したら成功と言えるのかも難しいところですね。

宮 それはある球団のコーチがすごく悩んでいた。60か70%あれば成功と言っていたような気がするけど、じゃあそれがサヨナラ負けの瀬戸際でもシフトを敷くのか、となるとね。

鳥 セーフティーバントを決められたらサヨナラ負けする場面でも大胆なシフトを敷けるのかというと、それは難しいですよね。

-場面場面で状況判断できて、いろいろ考えられる選手がショートにいると助かるということですね。ちょっと話はそれますが、現役後半の宮本さんはたまにショートを守った時、とにかくチョロチョロと動き回っていましたよね。

宮 久々にショートを守ると、もううれしくてうれしくて(笑い)

-松井秀喜さんが巨人で手をつけられないぐらい打っていた時に笑っていました。「宮本さんに言っておいてよ。あんなに後ろでチョロチョロしても変わらないから」って。どうやら打者から見た投手のリリースポイント付近で動いていたみたいで(笑い)

鳥 なるほど! ちょっとでも邪魔してやろうと思ったんですね(笑い)

宮 ちょうど松井のシフト的に二塁ベース寄りを守るから、リリースポイントはこの辺かなと思って、ちょっとでも気にならないかなと考えて(笑い)。まあ、それは笑い話だけど、時代が変わったとはいえ、もう少し自分でポジションや状況判断を考えられる選手が増えてくれると、個人的にはうれしいかな。

鳥 何も時代の流れに逆らう必要はないと思います。細かくデータをもらえる時代ですから、そのデータを生かさない手はありません。その上で自分の感性も磨いてデータとミックスさせられる選手が増えてくれば、強いですよね。

-和田さん、そんなところでよろしいでしょうか?

和田 いちいちオチに使うのはやめてくださいよ!

一同 爆笑。

◆宮本氏の遊撃守備 遊撃手として1452試合に出場し、ゴールデングラブ賞は97、99~03年に6度受賞。04~05年には463連続守備機会無失策のセ・リーグ記録を樹立(06年に中日井端が更新)。日本代表では04年アテネ五輪で9試合、06年WBCで2試合遊撃手を務めた。

◆鳥谷氏の遊撃守備 遊撃手で1777試合は坂本(巨人=1875試合)に次いで歴代2位。ゴールデングラブ賞は11、13~15年に4度受賞。ロッテ時代の21年には遊撃手史上最年長で開幕スタメン出場。日本代表では二塁手、三塁手の出場が多く、遊撃出場は13年WBCの1試合だった。