【阪神】大山悠輔「また1つ1つ積み上げて」5500勝導くV弾、コロナ禍自ら見つめ直す時間に

4回裏阪神2死一塁、大山は20号となる左越え逆転2点本塁打を放つ(撮影・加藤哉)

<阪神6-3DeNA>◇22日◇甲子園

阪神が巨人、ソフトバンクに次ぐ球団通算5500勝に到達した。5番大山悠輔内野手(27)が4回に3年連続20本塁打となる2ランで逆転に成功。新型コロナウイルスの濃厚接触者でチームを離れていたが、復帰後初アーチとなった。

6回には4番佐藤輝明内野手(23)の15号2ランも飛び出し、今季3度目のアベック弾でDeNAに快勝。前半戦は残り2試合で借金2。勝率5割ターンに望みをつないだ。

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大山の首元で「HERO」の4文字が光った。ファン特製の虎メダルがよく似合う男だ。ナインの前を歩くと、青柳から声をかけられた。「ナイスバッティング! ありがとう!」。思わず表情が緩んだ。

1点を追う4回2死一塁。3ボールから左腕坂本のチェンジアップを強振した。左翼ポール際へ飛距離118メートルの20号逆転2ラン。「ヤギさんにはいつも助けてもらっている。なんとか野手で頑張ろうと思っていたので良かった」。偽らざる本音に力がこもった。

「空白の5日間」を無駄にはしなかった。近親者の新型コロナウイルス陽性で濃厚接触者となり、13日に出場選手登録を抹消された。自宅からホテルへの移動を余儀なくされ、トレーニングもままならなかった5日間。仲間の奮闘をテレビ画面越しに見つめながら、冷静に心を整えた。

「こればかりは誰が悪いわけでもない。自分を見つめ直す時間ができたと、プラスに考えました。試合を外から違った目線で見て、自分が打席に立ったらどういう配球になるかな、とか。心の部分ではプラスになったと思います」

2軍戦1試合を経て、1軍復帰した19日から3戦連続安打。3日中日戦以来の1発は3ボールからチェンジアップを狙い打ったものだ。配球分析を早速結果につなげる姿が頼もしい。

虎の右打者では02~04年のアリアス以来、日本人の右打者では90~92年の八木裕以来となる3年連続20本塁打。「まだまだ。もっともっと打てるように頑張ります」。個人記録に厳しく、何より勝利に破顔する日々も今や見慣れた光景だ。

チームはこの日、プロ野球史上3球団目の通算5500勝を達成した。4番や主将を歴任し、人気球団で勝ち続ける難しさを人一倍知る男だから、まずは先人たちへの感謝が先に来る。

「5500勝は先輩方が積み重ねてきた数字。また僕たちもこれから1つ1つ積み上げていきたい」

大阪タイガースが初戦に挑んだ36年から87年目。虎には今、新時代のリーダーがいる。「勝てば全員の勝利、負ければ全部自分の責任」。そう言い切れる背番号3は節目の勝利を飾った夜、ヒーローにふさわしく映った。【佐井陽介】

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