【阪神】梅野隆太郎V消滅危機阻止の逆転三塁打「見る未来変わる」金色プロテクターに込めた思い

阪神対広島 ヒーローインタビュー後、笑顔で記念撮影する梅野(左)と岩崎(撮影・上山淳一)

<阪神6-5広島>◇14日◇甲子園

粘りきったバイ!3位阪神が広島戦(甲子園)に競り勝ち、クライマックスシリーズ(CS)進出へしのぎを削るライバルを突き放した。3度背負ったビハインドをはね返し、6回1死一、二塁から梅野隆太郎捕手(31)が右中間に決勝の逆転タイムリー三塁打を放った。残り8試合で4位巨人と1・5差、5位広島と2差。CS圏内を守り抜く!

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黄色に染まったライトスタンドが大きく揺れる。梅野の打球は右中間真っ二つだ。1点勝ち越された直後の6回1死一、二塁。負ければ優勝の可能性が完全消滅する土俵際で、森下から逆転2点適時三塁打を決めた。こん身のV逸阻止打に拳を何度も突き上げた。

「チームでつないで、たまたま自分が打点を挙げた。みんなのつなぎで乱打戦を制したんじゃないかなと思っています」

言葉通り、一丸だった。初回に先制されても、すぐ同点に追いついた。5回に勝ち越されると、その裏だ。二塁打でチャンスを作り、糸原の犠飛にヘッドスライディングで生還。「無我夢中でね。その場面を覚えてないくらい集中していた」。負けられない一戦。気持ちがこれでもかとプレーに表れた。

ちょっとした気分転換が、時に背中を押してくれる。8月下旬からゴールドがあしらわれたプロテクターを採用。今季使用していた白の差し色から変更した。 「少しのカラーリングで見る未来も雰囲気も変わる。143試合もあれば打てた時、打てない時。勝った時、勝てない時が、もちろんある。毎日勝負してるけど、遊び心も持って」

みんなに視覚的にも楽しんでほしい-。そう願う男だ。プロテクターなら守備の際、中継に映し出される。ファン思いの梅野らしい細部へのこだわり。残り8試合。ギラギラと熱く輝く準備は整っている。

シーソーゲームを制し、巨人とは1・5差、広島とは2差に広げた。執念が詰まった戦いぶりに、矢野監督は「諦めないっていうのはチームで大事にしていること。そういう思いが形になって本当にうれしい」。梅野も「1点差をモノにする緊迫感というのは、キャッチャーとしても非常にうれしい。こういうゲームを取るとチームも上がってくる」と、次へのはずみになると確信した。

お立ち台では同学年の岩崎に「次も勝つバイ」と決めせりふを先取りされ、思わず笑顔。仕切り直して「しあさっても勝つバ~イ!」と締めた。3位死守へ。束になって最後まで走り抜ける。【中野椋】

○…マルテがまた勝負強さを発揮した。1点を追う6回。梅野の2点三塁打で逆転した直後に代打で登場。梅野を中犠飛で生還させ、3日連続の代打での打点となった。新しい代打の切り札は「しっかり準備できていたし、まずは自分のスイングをすることと、確実にコンタクトすることを心がけた。いい結果になってくれてうれしいよ」と満足そうだった。

○…糸原が勢いづいている。初回、2得点につながる左前打を放つと、5回は一時同点の犠飛、7回にも左前打。3回の中直も完璧な当たりだった。犠飛は左翼線前方への打球。梅野が思い切ってホームに飛び込んだ。「相手のミスでもらったチャンス。思い切って積極的にスイングしました。梅野さんのナイスランのおかげです」。前日の3安打に続いて打線を機能させた。

○…原口がまたクリーンアップの仕事を果たした。初回、1-2と追い上げてなお1死一、三塁で右犠飛を打ち上げた。4試合連続で5番起用され、期待に応えている。「(大山)悠輔が難しい状況でしっかりまず走者をかえしてくれたので、何とか食らいつこうと思った。(三塁走者の糸原)健斗もよく走ってくれた。最低限の仕事ができました」と仲間に感謝した。

○…大山が試合を立て直す一撃を放った。初回、2点を先制されたがその裏すぐさま反撃。1死二、三塁で右前にはじき返し、すかさず1点。原口の犠飛で追いついた。「先頭からつないでいい流れで回ってきたので、何とか1点という思いだった」。4番として着実に打点を積み重ねる大山はこれがリーグ2位の84打点目。20年の自己ベスト85打点にあと1とした。

○…ケラーがラッキーな2勝目をゲットした。6回に2番手で登板したが、1死から小園に二塁打、続く会沢に一時勝ち越しとなる中前適時打を浴びた。それでも後続を抑えてベンチに戻ると、その裏に味方打線が3点を奪い逆転。1回2安打1失点ながら、助っ人に来日2つ目の白星がついた。試合後、岩崎からウイニングボールを受け取るかどうか聞かれたが「今日はいらない」と遠慮したという。

○…小幡が昇格即7番二塁でスタメンに抜てきされ、6回に安打で梅野の逆転適時三塁打につなげた。2打席凡退での第3打席、1死一塁で森下の外角低め直球を逆らわず左前へ。「下でずっといい感じのまま上がってきた。ああやって1本出て、すごくよかった」。2軍では9試合連続安打、9月は8試合で打率4割6厘(32打数13安打)、5打点と絶好調だった。7月20日広島戦(マツダスタジアム)以来、今季13度目のスタメンで新風を吹かせた。

○…浜地が踏ん張った。2点リードの7回2死二塁で岩貞に代わって登板。広島の5番マクブルームに右中間を破る適時二塁打を浴びたが、続く代打松山を遊ゴロに仕留めて危機を脱した。今季19ホールド目で、20ホールドポイントとなった。

○…岩貞がナイスリリーフで勝利の流れを渡さなかった。逆転した直後の7回に3番手でマウンドへ。先頭の上本に右前打を許すも、西川、坂倉の左の3、4番を三振、三ゴロに打ち取って2死二塁で浜地と交代。浜地が適時打を浴びたため1失点となったが、10ホールド目を挙げた。矢野監督は「この緊張感の中で、みんな気持ちで向かっていくのを大事にしている」と救援陣をほめた。

▼阪神が逆転勝利で、V消滅の危機を踏みとどまった。優勝消滅は最短で16日。同日ヤクルトが○なら、その後の14試合に全敗しても最終成績は74勝67敗2分けで勝率5割2分5厘。阪神は残る8試合に全勝しても73勝67敗3分けで5割2分1厘に終わり、ヤクルトを下回る。

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