【阪神】CS無安打に右翼失策、犠打失敗…だからこそ4番大山悠輔の逆襲に注目したくなる理由

DeNA対阪神 9回裏DeNA1死満塁、藤田を二ゴロ併殺に仕留め、グラブを突き上げる一塁手大山(撮影・鈴木みどり)

横浜スタジアムの場合、試合後のビジターチーム取材は駐車場通路で行われることが多い。ロッカー裏からわずか数メートルしか離れておらず、ナインの雰囲気がよく分かる。その点、CSファーストステージ突破を決めた直後の阪神ナインはちょっとすごかった。

興奮の雄たけびが各方面から次々に響き渡る。同球場での取材はもう16年目になるが、現地で体感したゲームの中では過去トップクラスの盛り上がりだったのではないだろうか。

「やばかったっす。シーズン終わったんかな、もう優勝したんかな、というぐらい(笑い)。もう試合ないんちゃうか、みたいな感じでした(笑い)」

ムードメーカーの北條史也でさえ、驚きを隠せずにいた歓喜の空間。皆が一様に意気揚々とチームバスへ歩を進める中、1人だけ厳しい表情を崩せずにいる4番がいた。

常日頃から勝利を最優先させる大山悠輔のことだ。きっと歓喜の輪にいるうちは笑顔で仲間と感動を分かち合ったことだろう。ただ、自分自身に納得できているかと問われれば、答えは「否」に違いない。

DeNAとのCSファーストステージ3連戦は計9打数無安打0打点。好機で1本を出せず、ライナーアウトを2度食らう不運もあった。その上、10日の第3戦では本職ではない右翼守備での失策に、痛恨の犠打失敗も重なった。いわば苦境のまっただ中。だからこそ、ヤクルトとのファイナルステージではますます背番号3に注目したい。

ファーストステージ開幕戦前日の7日、企画取材で大山の本音を聞く機会に恵まれた。新横浜行きの新幹線を待つ新大阪駅の10分間。スマートフォン越しに届いた言葉は、まるで直後の苦難を予測していたかのようなモノだった。

19年シーズン開幕直前のこと。就任1年目の矢野監督から「4番で行くぞ」と告げられた際にある約束を交わしたのだと、主砲は静かに振り返っていた。

「たとえ凡打になったとしても堂々としていよう。堂々と次に向かう姿を見せていこう。そういった言葉をかけていただいた。特にCSは短期決戦で失敗を引きずっている暇がない。たとえ凡退したとしても、すぐに切り替えることをより意識していきたい」

矢野阪神の集大成となる秋。今こそ指揮官との約束を力の限り体現するタイミングなのかもしれない。

10日DeNA戦。同点とした直後の6回無死二塁で4番がバットを寝かせた瞬間、ふと4カ月前の記憶がよみがえった。

今季レギュラーシーズンの犠打数は1。6月2日西武戦で2年ぶりの犠打を指令された翌3日、大山は日本ハム戦で1試合3本塁打を決めている。もちろん状況も結果も違うのは百も承知の上だが、揺れ動いた感情が再びきっかけとなる可能性は十分ある。

「みんなが束になる」を合言葉に臨んだCS。仲間が逆襲の舞台を用意してくれた。人一倍責任感の強い男だ。神宮球場でもこのまま終わるとは思えない。【遊軍=佐井陽介】