あるぞ、史上最大の下克上!! ロッテ監督として10年にリーグ3位から日本シリーズを制した西村徳文氏(62=独立リーグ・福井会長兼GM)が当時を振り返った。レギュラーシーズン終盤の戦いぶりがクライマックスシリーズ(CS)突破につながったと力説。「タイガースもいい雰囲気でやっている」と同じ空気を感じ取った。【取材・構成=桝井聡】
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球史に残る「史上最大の下克上」。CS制度がスタートしたのは07年だが、リーグ3位から日本一という大逆転劇を演じたのは10年のロッテだけだ。監督就任1年目だった西村氏は当時のチームの空気を鮮明に覚えている。「はじめは『勝とうぜ』って言い合っていたけど、だんだんとそれが『勝てるぞ』に変わっていった」。失うものがない挑戦者たちは、懸命に目の前の白球を追った。
西武とのファーストステージ初戦からシビれる試合だった。9回に5-5の同点に追いつくと、延長11回に福浦の決勝ソロで勝ち越し。西村氏は「あれで勢いに乗った」と振り返る。第2戦も延長戦を制してソフトバンクが待つ福岡に乗り込んだ。ファイナルステージは、第1戦に先勝したあとに2連敗。アドバンテージを含めて1勝3敗と追い込まれ、万事休すかと思われた。
だが、そこから3連勝でCSファイナル突破というミラクルを起こす。西村氏は「もう選手を信じるだけ。スローガンに掲げた『和』を体現するように、選手だけじゃなくコーチ、フロントが一体になっていたように思う」と当時の思いを振り返る。日本シリーズではセ・リーグ覇者の落合中日を4勝2敗1分けで下し、史上初の下克上物語を完結させた。
西村氏はレギュラーシーズン終盤の粘りが、ポストシーズンにつながったと分析する。「思い返せば、勢いというのはシーズンの最後に生まれつつあった」。ソフトバンクが西武に2厘差でリーグ制覇。ロッテは日本ハムと激しいCS進出争いを演じていた。残り3試合を残して4位。そこから3連勝で日本ハムに0・5ゲーム差をつけて3位に滑り込んだ。
今季の矢野阪神にも符合するところがある。巨人、広島と激しい3位争いを演じる中で、残り4戦を3勝1分けでフィニッシュ。4位巨人に0・5ゲーム差でCS進出を決めた。DeNAとのCSファーストをテレビ観戦した同氏は「タイガースもいい雰囲気でやってるよね。あの最後のピンチを切り抜けたんだから。ヤクルト戦が大事だね。特に初戦。ここを取ればさらに勢いが増す」と予想する。
貯金8のロッテとは違い、今季の阪神は借金3。勝率5割未満で日本シリーズ進出となれば史上初だ。リーグ3位からの下克上には否定的な意見もある。だが、西村氏は首を振った。「やってる選手はそんなこと思っていないだろうし、思う必要もない。ルールに則ってここまで勝ち進んだわけだから」。矢野タイガース劇場の続きは…。西村氏も「史上最大の下克上」の“更新”を期待しているようだった。
◆西村徳文(にしむら・のりふみ)1960年(昭35)1月9日、宮崎県串間市生まれ。福島高-鹿児島鉄道管理局。81年ドラフト5位でロッテ入団。86年から4年連続盗塁王、90年首位打者、ベストナイン、ゴールデングラブ賞を85年に二塁手で、90年に外野手で受賞。通算1433試合で打率2割7分2厘、33本塁打、326打点、363盗塁。97年に引退。その後はロッテ、オリックスで監督、コーチを歴任。現在は独立リーグ、日本海オセアンリーグ・福井の球団会長兼GMを務める。177センチ、78キロ。右投げ両打ち。