<高原は見た>
<日本シリーズ:オリックス6-4ヤクルト>◇第5戦◇27日◇京セラドーム大阪
オリックスにとって大きな勝利だ。チーム待望の本塁打が主砲・吉田正尚に2発も飛び出した。5回に一時、勝ち越し弾。そして9回のサヨナラ2号ときた。2勝2敗1分けのタイになったが流れを引き寄せたのはオリックスだろう。
オリックス・ブルーウェーブが日本一を決めた96年。巨人との日本シリーズは球界を代表する左打者の対決でもあった。イチローと、ゴジラこと松井秀喜だ。当時を知らない若いファンにすれば、そのシリーズがいかに注目された対決になったかを想像できるのではないだろうか。
「松井くんとボクとは違うタイプの選手だから、あまり比較されたくない」。イチローからはそれ以前にそう聞いていた。そもそも現在に至るまで松井に対してイチローが何かコメントすることはめずらしい。それでも、そこは節目だ。シリーズ前の練習が始まった同年10月8日。あらためてその部分の取材となった。するとイチローはこんな話をしたのだ。
「彼も注目されるのはつらいと思う。ボクはパ・リーグを代表しているつもりはないし、彼も同じ意識でしょう。ボクも彼もまだまだ成長していかなければいけないんですから」
年齢はイチローが1歳年長だ。松井は92年のドラフト1位で競合の末、巨人に入団、ミスター長嶋茂雄の薫陶を受ける人気者。しかし94年の「210安打」から日本中で知らない人がいないような存在になっていたイチローの方がスター度では上回っていた。
それもあってイチローが松井を気遣ったものと言える。そして本番。初戦で決勝弾を放つなど活躍したイチローに対して松井は打点をマークできず、明暗を分けた。それでもその後の2人がそろって、日米球界のスターとなったのは言うまでもない。
そして26年後のこのシリーズ。2年連続同じ顔合わせは同時にオリックス吉田正とヤクルト村上宗隆という日本球界を代表する左のスラッガー打者の対決という面もある。3冠王となり、MVP最有力候補の村上。初戦の神宮でダメ押し1号を放っている。その勢いがあってシリーズがここまで進んできたムードもあったが、ついに吉田正の本領発揮となった。しかし、この日、無安打に終わった村上も燃えているはず。両軍も2人もまだこれから。いよいよ熱いシリーズになってきた。(敬称略)