【復刻】巨人長野、丸佳浩の人的補償で移籍 育成の広島が35年ぶり日本一へ「本気」の決断

日刊スポーツ東京版(2019年1月8日付)

育成のカープが意外な「一手」を打った。広島が7日、巨人にFA移籍した丸佳浩外野手(29)の人的補償として長野久義外野手(34)を獲得したことを発表。過去は若手を中心に選んできたが、人的補償では野手最高年俸となる長野を指名。リーグ4連覇と日本一を達成するために、求めたピースだった。(年齢や所属、肩書などは当時)

◇   ◇   ◇ 

巨人から再び生え抜きのベテラン選手が去ることになった。FAで獲得した丸の人的補償として、長野が広島に移籍することが決まった。日大時代の06年(日本ハム)、ホンダ時代の08年(ロッテ)と2度ドラフト指名を拒否して09年に巨人入り。1年目に新人王、2年目に首位打者を獲得するなどチームの屋台骨を支えてきたが、西武に移籍する内海とともに、28人のプロテクト枠から外れた。

巨人山口オーナーは「何とも痛いですよね。長野選手はドラフトで他の球団から指名されて2回拒否をしてジャイアンツに入ってくれた。紛れもないチームの看板ですよね。内海選手も1回他球団の指名を断って来てくれた。2人失ったのは非常に痛いし残念です」と言った。

外国人選手などを除くと、巨人の人的補償の対象選手は47人で、19人がプロテクトから外れていた。国際電話で長野に謝罪したという大塚球団副代表編成担当は「全体のバランスを見てプロテクトしてますけど、まさかです。(広島は)若い選手が育っているから、まさかベテランを取るとは」と話した。丸の昨季推定年俸は2億1000万円で、今季の長野の方が1000万円高い。「若返りというのも考えてのプロテクトですが、あの辺を持っていくとは思ってなかったです。新井も引退したから右の代打というのもありますけど。難しいです。逆もありますからね」と言った。

再びチームに走った激震。ロサンゼルスに滞在中の長野は「自分のことを必要としていただけることは光栄なことで、少しでもチームの勝利に貢献できるように精いっぱい頑張ります。ジャイアンツと対戦することを楽しみにしています」とコメントした。

○…西武内海が自身に続き、人的補償で広島に移籍する長野との共闘を誓った。鹿児島・奄美大島での自主トレ中に、長野から電話で報告を受け「僕が移籍する時にチョーさんは『寂しい』と言ってくれましたけど、僕も本当に寂しいです。チームは変わりますが、ともに同じ形での移籍になるので、助け合いながら、頑張りたいです」と話した。

育成のカープが35年ぶりの日本一へ「本気」の決断を下した。FA移籍した丸の人的補償は熟考を重ねて、年を越した。指名したのは、実績十分の長野だった。

取材に応じた松田オーナーが心境を明かした。09年の巨人入りまで2度、他球団の指名から入団を拒否した経緯もあったため、「かわいそう」と判断を迷わせたという。その上で「育成でやってほしいという人もいるが、4連覇したいし、その期待に応えないといけない」と決断した。この日、長野は「3連覇している強い広島カープに選んでいただけたことは選手冥利(みょうり)に尽きます」というコメントを発表。同オーナーは「それは良かった」と安堵(あんど)した。入団会見は20日以降を予定。背番号は空き番号から選んでもらうことになる。

広島は大型補強せず、自前で選手を育成し、チームを作ってきた。リーグ3連覇を達成した昨年も投打の主力は生え抜きばかり。過去の人的補償も、07年は阪神から赤松(当時25歳)、13年は巨人から一岡(当時22歳)と、若手中心。しかし今年は4連覇と悲願の日本一達成のため、ベテラン補強にかじを切った。松田オーナーは「現場が決めることだが、現実的に3番を打てる選手」と話した。長野の昨季年俸1億9000万円は、歴代の人的補償選手では野手最高額に並ぶ。

若手野手や手薄な左腕投手も検討されたが「来年1年通して戦力となる選手」が選考の大きな柱となった。丸だけでなく、昨年限りで新井が現役を引退。若手の台頭に期待しつつ、主力級の力を持った選手を求めた。長野はFA権を取得しており、来オフに行使する可能性もゼロではない。チーム内でも菊池に次ぐ高給選手で、年齢も野手では石原、赤松に次ぐ。それでも鈴木球団本部長は「リストの中で一番いい選手を選んだ。いろんなことを精査して長野選手にした。まだ数年は輝ける」と期待する。

もちろん「育成のカープ」の看板を下ろすわけではない。球団幹部は「あくまでも競争」と口をそろえる。長野の経験をチームに還元し、競い合うことで若手の台頭も期待する。このオフ最後の補強の一手はチームに大きな影響をもたらすに違いない。