阪神近本光司外野手(28)が、3年連続3回目となる鹿児島・沖永良部島でのトレーニングを行っている。
2年前、知人から「淡路島と形が似ている」と提案を受け、自主トレ先として選択。21年は最多安打、昨年は盗塁王と2年連続でタイトルを獲得した活躍の原点の地だ。近本が愛する島の魅力とは-。自然豊かな現地をリポートする。【取材・構成=中野椋】
◇ ◇ ◇
大阪・伊丹空港から鹿児島空港まで約1時間10分。鹿児島空港で乗り継ぎ、小さめのプロペラ機に乗り込む。約1時間15分のフライトで近本の地元、兵庫・淡路島と似た、ひょうたんのような形をした島が見えてくる。鹿児島空港から沖永良部空港までは1日3便。近本は10日、昼すぎの便で入島した。
空港に到着すると、待ちわびたファンの声が飛んだという。「近本選手、おかえり~」。タオルを掲げ大勢の人が出迎えていた。まるで「故郷」に帰ってきたかのような盛り上がり。手作りの特大ボードまで用意する周到ぶりだ。同地の観光協会のスタッフによれば、約30人の子どもたちに囲まれ記念撮影した近本は、1年ぶりの再会に「大きくなったね」と優しく声をかけていたようだ。
島は北側が和泊町、南側が知名町と2つの町で構成されている。近本は初日に両役場を訪問。和泊町長の前登志朗氏(すすめ・としろう)は「今回、初めて来られたトレーナーの植松さんに『初めてだからヤギ汁食べないとな』って言っていたり、島にはすっかり慣れていた様子でした」と回想する。「プロ野球選手ですけど『近所の兄ちゃん』が帰ってきたような感覚です」。島全体が歓迎ムードになっている。
1862年には、西郷隆盛が島津久光の怒りに触れ、薩摩藩の重罪人として流刑となった地だ。約1年半の牢生活の間には、地域の子弟の教育に尽力。多くの優れた人材を輩出した歴史がある。その後、薩摩藩に戻されると明治維新を成し遂げた偉人の1人になった。島には「西郷隆盛上陸の地」「西郷隆盛像」もある。
そんな背景もあってか、人々は島外の人に対して温かい。美しい海に加え、鍾乳洞散策やケイビング(洞窟探検)など、パワースポット巡りも人気。コバルトブルーの海でのダイビングは近本もお気に入りで、2年前にはダイビングのライセンスを取得したほどだ。
過去にはボクシング元世界3階級王者の長谷川穂積氏が合宿を行っていた。連続テレビ小説「ちむどんどん」の主題歌「燦燦」を歌う歌手の三浦大知の両親が同島出身。さらに、サッカー日本代表・長友佑都の妻、平愛梨の両親の出身地ということもあり、和泊町役場の営業プロモーション部・安田拓さんは「沖永良部は自然豊かで人も温かく、エネルギーを得られる『ブラボーな島』です!」と力を込める。
「ブラボーな島」の後押しを受け、近本は2月1日のキャンプインに向け準備を重ねている。専用球場はなく、2年前に和泊町の城ヶ丘中学横のグラウンドに打撃ケージを設置。地元企業の協力を受け1日で作り上げたものを今年は、近本の要望で5メートルほど距離を延ばした。決して施設が整っているわけではない。ただ、人の温かさや自然の豊かさが、過酷なプロ野球の世界を生きる男に、エネルギーを与えているのは確かだ。
◆沖永良部島(おきのえらぶじま) 鹿児島市から南へ552キロ、北緯27度線の上に浮かぶ隆起サンゴ礁の島。周囲56キロ、面積94平方キロメートル。和泊(わどまり)、知名(ちな)両町合わせて人口1万4000人余り。年間平均気温22度という温暖な気候で四季を通じて熱帯、亜熱帯の花が咲く。東洋一の鍾乳洞、昇竜洞をはじめ200~300の大鍾乳洞群が見られ「花と鍾乳洞の島」の異名をとっている。島内ではウミガメのビューポイントがあるなど美しい自然が自慢。近本は沖永良部島の伊勢エビが大好物。