【阪神】ドラ6富田蓮、社会人時代は「納品書の計上作業」上司が語る仕事ぶりに見えた“マメさ”

職場の同僚と記念撮影をする阪神富田(最前列左)と馬場一平さん(最後列左から2番目)(三菱自動車工業(株)提供)

日刊スポーツでは、不定期企画「虎を深掘り。」で23年の岡田阪神に迫ります。第1回は1日に12球団新人最速勝利を挙げたドラフト6位富田蓮投手(21)を深掘り。所属した社会人・三菱自動車岡崎の3年間が即戦力左腕の基礎をつくった。当時の上司、馬場一平さん(34)が秘話を明かした。

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富田は大垣商(岐阜)を卒業後、三菱自動車岡崎に入社した。当時は基本的に午前、午後のどちらかで出勤し、残りの半日を野球にあてる日々を過ごした。在籍したのは「工務部工程管理課」。任されていた仕事は「製品の納品書の計上業務」だった。記載に抜けや漏れがないよう、入念な確認が必要な作業だ。元上司の馬場さんは、入社当時の印象を「普通の初々しい子」と振り返る。「特別すごくしっかりしているとかは、その時はまだ思わなかった」。だが在籍した3年間を通して、責任感が増していったという。

業務時間で空きができた時には、入社初年度の富田は同僚と話して過ごしていたが、いつしか自主的に掃除をするようになったという。「『何か仕事見つけてやらなあかんよ』とか言ってたんですけど。2年目とか最後の年は変わった」。後輩の成長を感じた瞬間だった。業務では自ら二重、三重でのチェックを欠かさず、馬場さんの知る限りミスはなかったという。「非常にマメ。真面目で細かい性格でした。ピッチングと同じで作業もひたすら淡々とやるんです。そういうところもつながっているんじゃないかと思うんですけどね(笑い)」。プレーに通ずる丁寧さが、仕事ぶりに表れていた。

プロ入りが決まり、同僚ら約100人で寄せ書きしたユニホームを送った。富田は選手寮「虎風荘」に持参。今も目につく場所に飾っている。「言葉をたまに読むと、やる気が出てくる。あそこで野球に専念できる環境をもらえたからこそプロの世界に入れた。感謝しています」。寄せ書きはサプライズで進めた計画だった。しかし書く時に、気づくと富田が隣にいたという。馬場さんは「会社に来るって知らなかった(笑い)」と苦笑。慌てながらも、渡す当日は「知らないフリして受け取ってくれたと思う。他の人からは何も言われなかった。黙っててくれたんやと思って」と、サプライズは無事に? 成功。後輩の優しさを感じたという。

富田は春季キャンプ途中から1軍に昇格し、安定した投球でオープン戦7試合は防御率0・96。1日のDeNA戦では延長12回にプロ初登板し、初勝利を挙げた。馬場さんは後輩の活躍に「率直にむちゃくちゃうれしい。彼が会社にいる時、僕から見たら普通の男の子。体つきも決して大きくはない。でも画面越しに見ると、すごく大きく、たくましく見えた。今後活躍して、もっと大きく見えてくると思う。僕らに自慢させてほしい。期待しかないです」と頬を緩ませる。ロッテ佐々木朗やオリックス宮城らと同世代。3年前感じた「普通の男の子」の背中はまだまだ大きく、たくましくなる。【波部俊之介】

○…富田はナイター練習に参加し、キャッチボールや投内連係などでマツダスタジアムの感触を確かめた。大竹からは「マウンドが固いから、テークバックが遅れる。早めに作るイメージ」などアドバイスを受けるシーンもあった。1日DeNA戦でプロ初登板初勝利を挙げた左腕。救援陣では貴重なサウスポーとしてフル回転する覚悟だ。

◆馬場一平(ばば・いっぺい)1988年6月2日生まれ、大阪府出身。高校時代は智弁和歌山で春夏合わせて3度甲子園出場。4強入りした06年夏には1試合2本塁打などで活躍。07年に三菱自動車岡崎に入社し、野球部に入部。10年に引退。部署は入社時から変わらず「工務部工程管理課」。

◆富田蓮(とみだ・れん)2001年(平13)9月6日生まれ、岐阜県出身。大垣商から三菱自動車岡崎を経て、22年ドラフト6位で阪神入団。昨年10月のU23W杯では、最優秀投手賞と先発投手部門ベストナインの2冠を獲得し、世界一に貢献した。174センチ、78キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸は750万円。