【西武】担当記者が札幌時計台からエスコンフィールドまで20キロ歩いた 劇勝で流れ変わるか

札幌市時計台とエスコンフィールドの中間地点にある緑豊かな「陽だまりロード」(撮影・金子真仁)

<日本ハム2-4西武>◇16日◇エスコンフィールド

流れよ、変われ-。5月苦戦の西武は、9回2死から長谷川信哉内野手(21)のプロ1号本塁打で追いつき、延長戦の末に勝った。同日、2軍も9回裏に10得点でサヨナラ勝ち。劇勝の連鎖に、担当記者は1ミリくらいは役に立ったのだろうか否か。「旅の日」でもある5月16日午前、札幌市時計台から北広島市・エスコンフィールドまでの約20キロを歩いて出勤した。

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■旅もペナントも似ている

スタート地点の時計台に深い意味はない。北海道っぽいし札幌の中心地だし、狸小路のホテルから札幌駅まで歩くのが面倒だし。

午前10時9分、出発。気温19度。長袖Tシャツでちょうど良い。風もある。気候としては申し分ない。碁盤の目の札幌で、青信号が続く。幸先よい序盤だ。

豊平川を渡る。市街地なのに水の透明度がすごい。川越誠司外野手(29)の地元はもう少し上流だったはず。打席への登場曲が個性的で、レパートリーも多い選手。「今年はもう少し絞りますよ」と言っていた。2軍では好調のようだ。

川の流れを眺めつつ、彼の持ち曲の1つ、テレサ・テン「時の流れに身をまかせ」を鼻歌する。こうやって、野球を感じながら歩くのはいい時間だ。健康維持もダイエットも、ただ運動時間が長いだけではきつい。自分なりに楽しみながら運動したい。野球のストーリーの中で、歩く。

4月は好調だった西武も、5月にガタッと落ちた。歩き旅のようだ。スタート直後は勢い良く、しかし全行程の20%~35%あたりが一番きつい。旅程の苦しさを感じ始め、かつ半分の地点までもまだ遠い。ペナントレースも今、ちょうど25%を超えたあたりだ。

背中が汗ばむ。南郷通を歩きながら試行錯誤する。背負っていたリュックサックを下ろし、右肩にかける。左右を入れ替えたり、前にかけたり、そのうち手で持ったり。いろいろな“戦術”を試しながら、来るべき後半戦に備えてベストの形を模索する。松井ライオンズも今、そんな戦いを続けている。

流れを変えたい-。歩くのには、いつもと違うことをするのには、そんな思いもあった。担当記者として西武に肩入れはしない。ただ、選手や首脳陣は丁寧に取材に応じてくれる。心から感謝している。その成果を私の端末に眠らせておくだけではもったいない。アウトプットしたい。勝てば記事も大きくなりやすい。

■全ては終盤戦のために

厚別区大谷地で幹線道路とお別れし、花と緑のサイクリングロードを歩く。歩く人はますます減る。「北海道では道を歩いている人は不審がられる」。そんなうわさを目にしたことがある。近年、民族共生象徴空間「ウポポイ」のオープンで話題になった白老町出身の若林楽人外野手(25)は「そんなことはないですよ」と笑って否定する。「いなかなんで、僕も昔は自転車ばかりでしたけどね」と懐かしそうだった。

旅も2時間半、15キロ近くなる。家並みが減り、緑の中へ。リュックの背負い方、足の運び方…すでに自分なりの「戦い方」を確立して後半戦に挑む。最後の森に入る前に「セイコーマート 上野幌駅前店」で小休憩。炭酸水でのどに刺激を与え、ソフトカツゲンも買う。17日の第2戦で先発予定のディートリック・エンス投手(31)の大好物で、彼がカツゲンを伝授したボー・タカハシ投手(26)も1軍に上がっている。カツゲンでゲン担ぐ。

ベーコンおかかおにぎりをかじりながら森へ入る。野幌原始林も近い。服に自然と虫が寄ってくる。「クマ」の看板はないけれど、朱鞠内湖での事故が報じられたばかり。警戒アンテナを強め、生存本能を敏感にして歩く。ペナントレースもそう。終盤戦は1つの出来事が全てを変えかねない。これまでの歩みをゴールにつなげられるよう、集中力をさらに高める。

実はこのコースを歩くのは3度目。建設初期にも歩いた。それでもやっぱり、森を抜けてドーンとそびえていると自然と顔が緩む。小休憩を除き、札幌市時計台を出発してから徒歩3時間44分。エスコンフィールドに到着した。だいたい2万7000歩だった。

記者席に着くと、仲間うちから「変態!」とバッサリ言われた。グラウンドへ向かう。数日前の雑談で「うわ、やば~っ」と少々引いていた栗山巧外野手(39)は、目が合うとニヤニヤしていた。ただの自己満足だけれど、自分の気持ちの持ちようも含め、閉塞(へいそく)感が少しでもなくなるといいな-。

もちろん本業は試合取材だ。苦しい試合ではあった。それを9回2死、長谷川がガラッと変える。上司から「たぶん3面だよ」と言われ、1月に長谷川が教えてくれた、舞妓(まいこ)だったお母さんとの話を高速でタイピングした。

やっぱりこうして、取材でインプットしたものを世にたくさん発信したい。15分で3面記事を書き終えた。終電まで30分。北広島駅まで徒歩30分。3時間44分歩いた足だ、走れば何とかなる-。走りだしたら、エスコンフィールド前に駅行きバスが待っていた。流れが変わったと信じている。【西武担当=金子真仁】