【潜入】日本ハム吉田輝星「僕を実験台にして」新人記者2人突撃!初々しい記事を読み比べてみた

日本ハム吉田輝星(2023年1月撮影)

日刊スポーツの新人記者2人が16日、千葉・鎌ケ谷の球団施設で日本ハム吉田輝星投手(22)に突撃潜入した。

取材ミッションは「故郷・秋田での13日イースタン・リーグ楽天戦での登板について」。同時取材した黒須亮記者(25)と佐瀬百合子記者(24)に、吉田は真摯(しんし)な受け答えで応じてくれた。取材で得たコメントは同じでも、記者によって伝え方や表現法は人それぞれ。吉田の言葉から、表情から、2人の新人記者は何を感じ、何を伝えたいと思ったのか。それぞれの感性と個性を働かせて執筆した記事に、吉田からの“感想”も届いた。【構成=木下大輔】

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吉田は突撃潜入取材を受けた翌日の17日、イースタン・リーグ巨人戦(鎌ケ谷)で登板後に、新人記者2人の記事をじっくりと読み込んだ。

最初に目を通したのは黒須記者の記事。「うん、うん」とうなずきながら読了すると「なんか、いいっすね」。そして、驚いたように「え、記者を始めたばっかなんですよね? 普通の記事を読んでいるのと変わらない感じっす、全然」と笑顔で率直な感想を話してくれた。

続いて、佐瀬記者の記事に目を通した。こちらも熟読すると「確かに全然、違うっすね!」と、同じテーマながら伝え方が変わることに驚きの表情。内容についても「たまに、言った人の本意と違う意味で伝わることってあるじゃないですか。そういうのがなくて、めっちゃ読みやすい」と、また笑顔になった。

16日には「僕を実験台にしてください」と快く取材を受けてくれた吉田。自身の記事を書いた記者1年生コンビに「2人とも、すごいっすね。普通の記事を読んでるのと、マジで変わんない。あとは僕のことだけ、よく書いてもらえれば(笑い)」とニヤリ。このたびは、お世話になりました。また2人が取材に伺った際は、よろしくお願いいたします。【木下大輔】

 

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<佐瀬百合子記者>

吉田にとっては甲子園を決めた思い出の場所、こまちスタジアムでの凱旋(がいせん)登板だった。だが、本音では「ファームの試合では、あんまり行きたくないな」とも思っていた。

1年前は1軍戦での登板も、今回は2軍戦。複雑な思いも抱えていたが、秋田で投げる姿を今年も待ってくれているファンがいた。7回からマウンドに上がるとひときわ大きな歓声を浴び、1回無失点に抑えた。 やみつきになるような歓声は久しぶりだった。「良い意味で僕は野球選手と思われてないのかな。ストライクを取っただけで“わー”って言われるんで。素人くらい、ストライクを取れないと思われているんじゃないかな」と笑って振り返る。

「やっぱ、行って良かったな」。手に取るように声援の力を実感した。「アドレナリンがもうバーンって出る感じ。調子良いとか悪いとか関係なく、良い球が行きはじめるんで」。投げる前の雑念は、いつのまにか払拭されていた。

“金農旋風”をきっかけにプロの世界に足を踏み入れた。プロでも屈指の人気を誇り、鎌ケ谷でも片手で持ち帰るのが精いっぱいの差し入れをもらうことも多いが、秋田では帰りのバスの車内から子どもへボールをプレゼントした。 少年時代、秋田でヤクルトと巨人が試合を行った時があった。外野席から「『小笠原~』とか言って、手を振ってもらえるだけでめちゃくちゃうれしかった」という思い出が、秋田が生んだスターの原点だ。みなぎるアドレナリンは冷めぬまま、1軍昇格の時を待っている。【佐瀬百合子】

 

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<黒須亮記者>

吉田が秋田・こまちスタジアムでの凱旋(がいせん)登板を終え、胸の内を明かした。

1点リードされた7回に登板。内野安打と失策で1死一、二塁のピンチを招くも、楽天安田を併殺に打ち取りホームを踏ませなかった。「マウンドに上がった時にデカい歓声もらったんで、すごい気持ちが入った」と力が湧いた。

複雑な思いもあった。昨季は1軍の6月21日楽天戦で先発も、今季の“再帰郷”は2軍戦のリリーフで1イニングのみ。理想とは違う姿に「ファームの試合ではあんまり(秋田に)行きたくないなと思ってました」と本音も抱いていた。

しかし、ふとした出来事が心に残っている。試合後、新幹線の関係で足早に球場を去る時、バッグにうっかりチームのボールを1球入れたままに。そこに、幼い少年が吉田を間近で一目見ようと立っていた。吉田はそのボールをプレゼントし、幼い頃の記憶を思い出した。

数少ない秋田開催のプロ野球の日には、こまちスタジアムのフェンスの向こうから選手に手を振った。巨人戦では「オガサワラ~って言って手を振ってもらえるだけでめちゃくちゃうれしいみたいな」と純粋にプロ野球を楽しんだ。幼い頃の自分の姿と、吉田からボールをもらって大喜びする少年が重なって見えた。

地元での登板を終え、「やっぱり行ってよかったな」と充実した表情を見せる。今季はまだ1軍登板なし。それでもファームで磨いてきた変化球に手応えを感じている。地元での大歓声とファンとの交流を力に変え、1日でも早い1軍昇格をつかみ取る。【黒須亮】