「優勝して高校野球や部活動の幅が広げられることを証明してほしい」
リーグ連覇を成し遂げた昨季、中継ぎながらチーム最多タイの9勝を挙げたヤクルト木沢尚文投手(25)は、母校慶応が挑む世紀の甲子園決勝を東京ドームから見守る。
午後2時プレーボールの決勝戦はちょうど、巨人戦(同6時開始)に向けたチーム練習とかぶる。それでも「練習が終わる時間帯に、ちょうど決勝も終盤を迎えていると思うので、そこで見たい。良い試合になっていることを願います」と語った。
木沢は16年夏、神奈川県大会の決勝で横浜に敗れ、甲子園出場の夢はかなわなかった。甲子園決勝を戦う後輩たちへ「純粋にうらやましい」と話す。その理由が冒頭の言葉とつながる。
「慶応高校の野球部は独特なカラーを持っている。うちの野球部が勝つことで高校野球の幅、部活動の幅が広がっていくと思うので、ここまでの戦いはすごく意義がある。彼らは何かといろいろ言われながらの戦いだったと思うんですけど、それさえも味わいながら戦えるのは彼らの特権。うらやましい」
幅とは何なのか。それは目に見える髪形だけではない。
「『高校野球はこうあるべきだ』という時代が長かったと思う。髪形しかり、いわゆる軍隊式のようなところもあったと思うんです。時代とともに変わっていく中で、僕らも高校時代からそういうものとは違った高校野球の意義や価値があるんじゃないかなと感じながらやっていた。それを証明できたらと思っていた」
木沢の高校野球時代、全体練習は午後4時から始まり同7時前には終わっていた。自主練習を重んじ、そこから遅くまで練習する選手もいれば、早めに帰宅し翌朝に練習する選手もいた。早く帰るからとその選手に対し、後ろ指を差すような風潮もなかった。
「遠方から通っている人もいたので。僕はAO入試組ですけど、内部進学者、一般受験者もいて、いろんなバックヤードがあるので、あまり他人のことは気にしない環境だった」
文武両道がスタンダードという環境の中、やはり勉強はした。
「正直、留年があるので…。日々の授業でできることをやりつつ、テスト前にある(部活の)休みを利用して寝ずにたたき込んでなんとか。もちろんできる人間は普通の勉強量でいけると思うんですけど、僕らは正直学力では及ばなかったので何とか必死に勉強しました」
慶大への内部進学にも高校の成績が影響する。成績上位者から希望学部を選ぶ。
「法学部に行ければ良かったなというのはあったんですけど、結果的に法学部に行ける成績はなく商学部になりました(笑い)」
スポーツでも学問でもビジネスでも、どの業界においても活躍できる人材育成が理念だ。
「上田誠前監督もそうおっしゃっていました」
107年ぶりの全国制覇を懸けて後輩たちが戦う。「僕らの代もそうですけど、甲子園に出ること自体がなかなかないことで、ましてや決勝まで行けるということは、学校としても貴重な機会。本当にすごいチームを森林さんはつくったなと思います」
証明-。冒頭の言葉には、続きがある。
「勝負事なので勝たないと意味がない。勝って初めて証明できるものがある。だからこそ優勝を願っています」【三須一紀】