侍ジャパンの監督が決まらない。6月2日の栗山監督退任会見の直後、NPB井原事務局長は「11月に大会(アジアプロ野球チャンピオンシップ)がある。逆算すると8月末には体制を作らないと」と話した。「多少ずれこんでもいい」とも言ったが、9月半ばに前任者の再登板が話題になる時点で難航がうかがえる。
そもそも、監督選考は時間がかかる。複数に同時オファーはしない。1人に声をかけ断られたら次にいくため、返事を待つ時間が必要となる。今回、NPBは監督経験者を中心に40人ほどリストアップ。イチロー氏や松井秀喜氏が断ったと報道された。他にも断った人たちの名前が聞こえてくる。
なぜ、誰も受けないのか。榊原コミッショナーが端的に語った。8月末にNPB事務局で話を聞くと「みなさん、前の人がすごかったから断られる」と言われた。確かに、栗山監督はすごかった。大谷、ダルビッシュらメジャーリーガーを招集し、準決勝、決勝と劇的な展開の末の3大会ぶり世界一。日本中が熱狂した。同等以上のものが期待されるとなれば、引き受けるハードルは高い。ならば、栗山監督の後任は栗山監督に-。再登板を推す声がNPBから出ていた。
ハードルの高さは別にも理由があるだろう。新監督の任期は26年春の次回WBCまで。3年近く保障されるとも言えるが、その間はプロ野球の監督には就けず、評論活動なども制約を受ける。それだけ責任があると言えばそうだが、なり手が見つからない以上、代表監督のあり方を再考する時期かもしれない。
新監督の初陣となる11月の大会は24歳以下の編成が中心で、参加国も限られる。WBC前哨戦の意味合いは、ほぼない。ビジネス上の理由や次回WBCまでのストーリー性を重視すれば、11月から新監督で臨むのが理想ではある。ただ「次期監督は誰か」ばかり注目されるが、本当に大切なのは「26年のWBCで勝利に導ける監督は誰か」だ。フルメンバーではない11月の大会は、アンダー世代の監督や、ファーム日本選手権優勝監督に託す選択肢もあるのではないか。
侍ジャパンはトップから各世代、女子までとピラミッドの構図となっている。8月末に東京ドームで行われた「高校代表対大学代表」は2万6000人近くが詰めかけた。甲子園人気が底にあるとしても、平日ナイターのアマチュア戦にそれだけ集まるのは、世代をまたぐ「侍ジャパン」のブランド力が浸透した証しでもある。その象徴であるトップチームの監督は、多くのファンに望まれる存在のはず。誰かが火中の栗を拾う結末は避けたい。【侍ジャパン担当=古川真弥】