<西武3-2ロッテ>◇17日◇ベルーナドーム
ロッテ佐々木朗希投手(21)が17日に先発することが明らかになると、岩手県に住む吉田小百合さんは、決意した。
「よし、行こう」
16日夜にベルーナドームのチケットを取り、この日朝6時半、自宅を出発し、東北新幹線に乗った。
「ライトスタンドの方も少し空いてたんですけど、こっちの方が朗希の顔を見られるし」
そう思って三塁側の席を選んで、1人で座った。
「朗希の試合を見るの、プロに入って初めてです。ずっとコロナ禍だったし、私も忙しかったし」
いつ以来か。
「夏の決勝…あ、投げてないのか。そうしたら、準決勝以来ですね」
もう1500日以上が過ぎた。吉田さんは4年前、大船渡高校の教師だった。そして野球部長だった。やたらと背の高い部員が、国内高校生史上最速の163キロを出して、有名どころじゃない有名になった。
「あの時は異質でしたよね。普通の高校野球とは違って。朗希があれだけ注目されて、それを連れて歩くっていうのは、私自身すごく貴重な体験でした」
目尻を下げて懐かしむ。話すように、校外へ出向く際は一緒に歩いているシーンも多かった。そこにもちょっとしたエピソードが。
「よく一緒に歩いてたじゃないですか。そうすると朗希、いつの間にか視界から消えるんですよ。で、何してるんだろうって思うと、必ずごみ拾いしてるんです。野球部あるあるみたいですけど、そういうルーティンを自分で決めてやれる子なんだな~って」
初めて生で見る「ロッテ佐々木朗希投手」は、初回から制球に苦しんだ。遠目だから様子は分からない。
「暑かったのかな…。ここ、いつもこんな感じなんですか? でも暑いのは他の皆さんもそうだし。仕事で野球やってると、逃げ場がないんだろうなーとか見てて思います」
卒業式以来、会う機会もないという。でもたまにメールを送る。返事も届く。「完全試合の日も、読めるわけないのに、試合中に送っちゃったりして」。今ではファンの1人だ。
高校時代、エースだけが取材を受けるのを嘆いていた。みんながあっての大船渡高校野球部。朗希もそんな思いが強かった。彼らは就職活動の時期。「他の子とも全然会っていないので」と親目線で心配する。
だから、せめて1人だけでも“授業参観”できて良かったと感じる。
西武ファンの多い三塁側に座ったけれど、教え子の1球1球に周囲がわく。拍手も聞こえる。
「うーん、うれしいですね。うん」
今は遠くにいるけれど、いつまでもかわいい生徒の1人だ。【金子真仁】