【阪神】歓喜の輪に出遅れた桐敷拓馬のブルペン舞台裏「正直、気が動転していた」

阪神対巨人 記念撮影を行う左から桐敷、梅野、湯浅、大竹(2023年9月14日撮影)

<虎番リポート>

阪神担当が独自の視点で取材する「虎番リポート」。今回は14日の巨人戦(甲子園)で18年ぶりのリーグ制覇を達成した瞬間、歓喜の輪に出遅れた阪神桐敷拓馬投手(24)のブルペン舞台裏に迫った。ゲームセットから約20秒後に合流した左腕は一体何をしていたのか。スタンドから見ることのできないベンチ裏の動き、心境に焦点を当てた。【取材・構成 三宅ひとみ】

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18年ぶりの「歓喜の輪」に、1人だけ完全に出遅れた選手がいた。

二塁手中野が優勝のウイニングボールをキャッチ。内外野を守っていた選手、ベンチにいた選手、打撃投手らが一目散にマウンドに走る。一方、中継ぎ左腕の桐敷は二飛が打ち上がった瞬間、一塁側アルプススタンドと同内野席の間の通路から久保田投手コーチ、ブルペン捕手らと猛ダッシュ。輪ができてから約20秒後、遅ればせながら喜びの渦に飛び込んだ。

「フライが上がった瞬間にブルペンからダッシュで向かったんですけど、ちょっと遅れちゃいました。全力疾走でした(笑い)」

2点リードで迎えた9回、巨人の先頭岡本和を二飛に打ち取った時点で、左腕は1度ブルペンからベンチへ向かった。しかし、守護神岩崎が坂本に左越えソロを被弾して1点差。続く秋広に右中間フェンス直撃の二塁打を浴びたところでブルペンに戻った。キャッチボールを再開し、肩をつくっていた最中に優勝が決まった。

1点リードの9回に誰かが肩を作るのは当然の流れ。ただ、この日は優勝が懸かった一戦だった。1人で準備を進めながら、冷静ではいられなかった。「自分がこの展開でマウンドに上がるのはさすがに…。正直、気が動転していた感じでした」と苦笑いで振り返る。「ザキさん、抑えてください!」と念を送り続け、出番が来る前にゲームセット。「内心ホッとしました」。少し後れを取ったが、歓喜のピークにはギリギリで間に合い「うれしかった」と胸をなで下ろした。

ブルペンで桐敷の投球練習を見守っていた久保田投手コーチも「もう全力でいきましたよ」と遅れてマウンドに駆けつけた。05年の優勝決定時は「JFK」の1人として胴上げ投手となり、歓喜の輪の中心にいた。「(ベンチから)すぐに行けるのが一番だけど、勝ち越されたり逆転されたりしたら代えると思うので、その準備をしておかないといけないので」。最後まで仕事に徹して胸を張った。

試合終了の瞬間まで手を抜かなかった“ご褒美”なのか、マウンド上では予期せぬ事態にも驚いた。岡田監督の胴上げが終了した直後、3番目に指揮官と熱い抱擁を交わした。「たまたま監督が目の前にいらっしゃったので、お辞儀して握手してハグしました。いい経験になったかな」と照れ笑いだ。

桐敷には新たな野望がある。「日本一を決められたら、みんなと一緒にマウンドに行きたい」。いの一番に歓喜の輪に飛び込むチャンスは、まだ残されている。