<寺尾で候>
日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。
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冬のパリを訪れるのは久しぶりだ。ちょうどサッカー女子の欧州チャンピオンズリーグで、地元のパリ・サンジェルマン(フランス)対ASローマ(イタリア)戦が開催されていた。パリでベースボールの“花”が咲くのは、しばらく時がかかりそう。メッシ、ネイマール、エムバペらスーパースターがプレーした「パルク・ド・フランス」が盛り上がる光景には、サッカー文化の根強さが感じられた。
そんな野球の発展途上国でも、「オオタニ」だけは別格のようだ。プロサッカーを観戦したのは、ドジャース移籍を決断した大谷翔平の入団会見が開かれた日で、日米だけでなくパリでも話題になった。
ローマの主力選手としてプレーする熊谷紗希、南萌華に会った。日本女子代表(なでしこジャパン)の2人も日本を飛び出して活躍している。ただ巨額の大型契約を交わした“怪物”は別世界の人間のようだ。
同じ海外で羽ばたく日本人アスリートのニュースに熊谷が「すごいです。もう次元が違います」と苦笑すると、南は「チームにカナダ人の選手がいて話していたところです」と反応した。
日本ハムの本拠地、北海道出身の熊谷は、大谷と“縁”があった。リヨンに在籍した15年7月20日対楽天の札幌ドームでファーストピッチに登場。その打席に立ったのが大谷だった。
「野球はあまりわからなかったのですが、日本ハムさんから招いていただきました。大谷さんからサインしたバットをプレゼントされて、父がすごく喜んでいました。活躍するというか、活躍し続けることがすごいです」
熊谷といえば日本代表の主将で、その実績から女子サッカー史上最高のプレーヤーと言っても過言ではない。11年ドイツW杯には全試合フル出場し、米国が相手の決勝戦でPKを決めて歓喜の初優勝に導いた。
ドイツ、フランス、イタリアなどフィールドを変え、今なおサッカーを追求する。来年2月にはパリ五輪出場をかけた最終予選も控えている。日の丸をけん引する熊谷は「最後まで気が抜けない」と引き締める。
各国を転戦する移動の搭乗機も、エコノミーからビジネスに変わったという。10年総額7億ドル(約1015億円)で契約した大谷とはケタ違いかもしれないが、頂点を夢見続ける。
「あのとき大谷さんからいただいたバットは、もううちの家宝です。わたしたちもあの強さにあやかって挑戦を続けますね」
熊谷はそう言い残して来年パリ五輪会場になるピッチでフル出場した。いやいや。大谷もいいけど、世界の舞台で戦う、なでしこのひたむきな姿だって美しいよ。(敬称略)【寺尾博和】