プロ野球界を代表するアーチスト、西武中村剛也内野手(40)と巨人岡本和真内野手(27)の合同自主トレが7年目を迎えた。今年も12月、都内で行われた。
◇ ◇ ◇
中村は打撃練習を始める前に、入門でやって来た“ベッケン”こと渡部健人内野手(24)に呼びかけた。
「おーっ、ベッケン。キャッチボールやろう?」
軽いスナップスローから始める。11月3日、長男の野球の試合を日陰で観戦していた中村は「何もしてない。子どもとキャッチボール? 子どもともしてない」と完全充電を明かし「そろそろウオーキングから始めようかな、夜な夜な」と言っていた。
そこから1カ月以上たっても、まだあまり強度は上げていないようだった。
「今日でキャッチボール、2回目くらいかなぁ。ほんと、何もしてない」
そう言われた渡部が笑う。笑いながらも、少しずつ少しずつ2人の距離を広げていく。
「練習しなあかんなぁ。ベッケン、おまえ練習してんの?」
「はい」
渡部は所沢の室内練習場でけっこう連日打ち込んでいる。師と慕う中村に少しでも近づけるように。
「ベッケン、おまえそのジャージちっちゃいな」
「2XLです」
「2XLは無理やって」
ともに100キロ超の体格だからこそ分かる、そんな感覚。ややパツパツな渡部に向けて、中村も少しずつ強く投げ始めた。
「キャッチボール楽しいなー」
暖まっていく肩に、不意にそんな言葉がこぼれる。距離が離れ、ともに言葉が減り、5分くらいはグラブ音が響くばかり。
中村が距離を詰めた。
「飽きた」
「えっ?」
「キャッチボールって飽きるな」
そんな感じで終わった。今度はノック。中村は子どもたちの練習に付き合っていることもあり「ノックだけはやってる!」とうれしそう。「俺が打つ」とノッカーを名乗り出た。
最初は正面のスタッフからボールを手渡されていたが、やがて正面を見ながら右手だけを後ろに差し出てボールを受け取る方式に。
「これ、めっちゃラクやな! めっちゃラク」
40歳、新たな発見にワクワク。のんびりマイペースでもやっぱり、打撃練習が始まるとさすがの理論ぶり。2時間ほど交流を深めると「よいお年を」と帰っていった。【金子真仁】