【阪神】異例の「4連続代打」の舞台裏 9日ヤクルト戦、逆転サヨナラを導いたのは…

阪神対ヤクルト 9回裏阪神2死一塁、代打原仁は左前打を放つ(2024年7月9日撮影)

<虎を深掘り。>

日刊スポーツの随時企画「虎を深掘り。」の第16回は、異例の「4連続代打」の舞台裏を取り上げます。9日のヤクルト戦(甲子園)は1点を追う9回に怒濤(どとう)の代打攻勢で逆転サヨナラ勝ち。岡田彰布監督(66)の周到で攻撃的なタクトに、ベンチメンバーたちは最善の準備で応えました。【取材・構成=柏原誠】

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1点を追う9回。阪神ベンチ裏のスイングルームには、代打に備える選手5人ほどがひしめいていた。緊張感が高まる。来たる出番を想定し、シナリオを言い合った。「ピッチャー田口さんか」「もし、こういう状況になったら」…。

代打の切り札・原口が当然といった口調で振り返る。「全員が1番手と思って準備していました。しっかり準備しておかないと差し込まれてしまう。あとは出るか出ないかだけ」

用兵を決めるのは岡田監督。しかし野球は生き物。すべてを事前に指示できない。控え選手は、心も体も後手だけは踏まないよう、前がかりに構えていた。

ヤクルトは抑えの田口を投入してきた。左腕だ。阪神の先頭は佐藤輝。岡田監督は「相性よかったから」と出塁を期待した。一塁に出れば、次は代打坂本に犠打を任せるつもりだった。坂本以外の代打陣も情報を共有していた。

佐藤輝は左飛。次の作戦に切り替えた。打者は島田。左対左だ。残っていた代打候補は代走のスペシャリスト植田をのぞいて、6人全員が「右打ち」だった。

☆原口、坂本、熊谷、渡辺、豊田、野口

まず野口が指名された。四球を選んで貴重な仕事をした。代走植田が瞬時に向かう。1死一塁。続く梅野には2人目の代打渡辺。代打成績が3割3分3厘あったが、右飛に倒れた。

追い詰められた。2死一塁。小幡に代わる3人目の代打は原口だ。ベテランは左前打を放って、試合をつないだ。そして9番投手には4人目の代打坂本。三塁線のゴロを北村がはじき、幸運にも一塁に生きた。2死満塁。近本の右前打で逆転サヨナラ勝ちした。

「何種類もシミュレーションしていたからね」。平田ヘッドコーチが明かした。代打を複数使える一方で、延長戦も考えなくてはいけない。捕手登録は2人。梅野が下がる時点で、坂本が10回からマスクをかぶることが決定。もし延長戦で坂本がケガしたら…。今のメンバーでは元捕手の原口しかいない。サヨナラの走者でも、原口に代走が出なかった理由だった。

岡田監督は延長戦の場合、「大山がライトだったよ」と明かした。外野経験はあるが、昨季から一塁しか守っていない。大山は豊田に外野用グラブを借りるつもりだった。一塁は原口、遊撃には植田。渡辺の打順に投手が入る。

「2人は残しておかなければいけなかった」と平田ヘッド。もう1回投手に打順が回る可能性があった。代打は豊田だっただろう。ユーティリティーの熊谷が残る流れだった。ただ、選手たちは決めつけることはない。9回、原口の代走があった時に備え、実は熊谷も準備を終えていた。

ベンチ裏には試合を映すモニターがある。相手ブルペンも映る。相手投手がベンチ前に出てくれば、選手やコーチが「続投だ」と教えてくれる。この日は先に代打で出ていた糸原が、情報の伝達役になっていた。

経験が浅い野口は「原口さん、糸原さんの準備を近くで見て、勉強になることばかり」と感嘆。結局出番がなかった豊田は「すごい緊張感。味わった人にしか分からない」と、興奮を思い出すように話した。

監督の踊るようなタクトに裏で、一瞬にかける選手たちのプロの姿があった。

◆9回攻撃開始時

1(中)近本

2(二)中野

3(左)前川

4(一)大山

5(三)佐藤輝

6(右)島田

7(捕)梅野

8(遊)小幡

9(投)石井

◆9回攻撃終了時

1(中)近本

2(二)中野

3(左)前川

4(一)大山

5(三)佐藤輝

6(右)島田

→代打野口

→代走植田

7(捕)梅野

→代打渡辺

8(遊)小幡

→代打原口

9(投)石井

→代打坂本

◆同点止まりだった場合の延長10回表メンバー予想

1(中)近本

2(二)中野

3(左)前川

4(右)大山

5(三)佐藤輝

6(遊)植田

7(投)--

8(一)原口

9(捕)坂本