<阪神9-2巨人>◇1日◇甲子園
右京コールが止まらない。阪神前川右京外野手(21)がプロ初の1試合3タイムリー。「チャンスで1本打ちたかった」と胸を張った。自身のまゆげが発端になった「カモメポーズ」に続き、ベンチを軽く指さす。SNSで流行のカンカンカンダンスを決めて、ナインと喜びを分かち合った。
初回2死満塁で、右前に先制決勝の2点打。「2死満塁だったので、凡退したら流れを持っていかれるかなと思った」。2カ月前にノーヒットノーランを食らった戸郷の出ばなをくじくと、5回は詰まりながら右前へ運び3点差に拡大。内角直球を想定しながらスライダーを「いっちゃえ」と強引にたたいた。6回は左腕中川から。2日前にやられたスライダーを拾って中前へ。リードを6点に広げる8点目。カン、カン、カンと今季3度目の猛打賞で自己最多タイの4打点。技術と強い精神力の結晶だった。
智弁学園で1年夏から4番で甲子園出場。3年春、そして最後の夏は準優勝。甲子園の申し子が甲子園のメモリアルゲームで光り輝いた。高校時代とは全く違う雰囲気に「すごかったです」と目を見開き「甲子園を目指してやってきて、今は本拠地でできている。感謝の気持ちを忘れず、これからも」とうなずいた。
ドラフト4位指名され、入寮を控えた21年の暮れ。当時の矢野監督が前川の1軍キャンプ抜てきをにおわせる発言を見聞きした。自分も強気な態度を取っていたが内心は違った。「1年目は無理。プロで3年できるかどうか」。出身の津ボーイズ関係者に本音を吐いた。そんな弱気は猛練習で押しつぶし、その3年目はクビどころか毎日のようにラインアップに名前がある。そしてこの日、何としても勝ちたいメモリアルゲームでV打点。しかも前回無安打無得点を許した戸郷にリベンジを果たした価値は大きい。「みんなが強い思いを持っていた」。次の100年へ。1軍最年少の21歳が、希望にあふれる白星を刻んだ。【柏原誠】