プロ野球関係者からの認知度を年々高める“独立リーグの人”がいる。BCリーグに所属する「茨城アストロプラネッツ」の色川冬馬GM(34=いろかわ・とうま)だ。前後編に分けて独自のGM観に迫る。【取材・構成=金子真仁】
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今年のNPBドラフト指名を待つ若者の中に、根岸涼投手(26)がいた。
昨オフはコロンビアでのウインターリーグで投げ、メキシコ球団と契約。しかしクビになり、帰国後はまたBC・茨城(以下「茨城」)で投げた。西武の入団テストでも強い存在感を見せていた根岸は、ドラフト指名がなく、今は「またコロンビアに行きましたよ」と色川GMはあっさりと話す。
米国の独立リーグや世界各国の野球界に独自のパイプを持ち、34歳にして日本球界でも唯一無二の存在になりつつある。
9日にロッテがポスティングシステムでのメジャー挑戦を容認した佐々木朗希投手(23)のこともかなり早い段階からチェックし、163キロを出す前の練習試合から足を運んでいた。
茨城のGMとして4シーズン目を終えた。NPB球団とはまた違った役割があると感じている。
「チームの編成は当然、仕事なんですけど、選手を売り込むことも仕事。NPBに行きたい選手に対して、そこにふさわしいマインドセットを整えるというか、人としてのあり方を身につけさせるのも仕事だと思っています。プロ野球選手になるイコール、社会への発言力や責任を同時に伴うと思っているので」
思い出すのは高校時代のこと。一塁ベース上で「拡声器を持ってヒーローインタビューの練習をしていました」と懐かしむ。なぜなら、プロ野球選手になりたかったから。
「プロになりたい選手はたくさんいるんです。でも夢に対する解像度がぼんやりしていしまっている選手が多い。目標を明確にして、解像度を上げて」
GM職がクローズアップされるのは編成面の仕事。色川GMも「僕も“切って貼って”と思っていました」と振り返り、続ける。
「でも教育も大事です。なぜ日本でプロ選手になりたいか。自分たちはなぜいま野球をできているか。数少ないスタッフの人たちがこれだけの予算を持ってきてくれている。球団に対するロイヤリティーをちゃんと持ちなさいと、選手たちにいつも言っています」
球団マークを隠すようにサングラスを引っかけている選手には注意する。SNS露出を照れる選手にも、言うべきことを言う。
「その話だと、ドジャースのロバーツ監督がすごく分かりやすいです。日本の野球界にない監督像なんですよ。スーパースターじゃない。でも球団が大事にしている哲学とか、すごく言葉にするのがうまい」
選手獲得だけでなく、選手を1人の社会人として育て、マーケットに向けてのチームの価値を高める-。そこにGMとしての目指すべき高みを置く。
夢は誰にでもある。色川GMにもある。
「いつかはNPB球団のGMを、という思いもいつかはありますよ。でも今一番思っているのは、例えば台湾(でのGM)とか」
なぜ台湾か。日本国内の独立リーグ球団の約10倍のスケール感の予算、収支が台湾球界だという。いつか届きたい目的地へ、着実に1歩ずつ。
だから止まらない。己にムチを打つ。
「この1年間、けっこういろいろなところに行ったんですよ。冬場から韓国行って、台湾、メキシコ、マイアミ、アリゾナ…いろいろなところに自己投資で行ったんです」
米国滞在中の色川GMからLINE電話がかかってきたことも2度あった。
「なぜかって言うと、僕も茨城のGMになって、自分の持っている人脈とか全力で惜しみなく出してきて。それをもう1回考えた時に『やべえ、もう1回自分自身、リスクを取って勝負しないと』って思ったんです。次の2~3年、走り抜けないかもしれないっていう危機感がありましたね」
相応の額を自己投資し、車でも3年間で11万キロ走らせ「野球人と会う」ことを徹底してきた。領域が多い分、GM職につく人にはそれだけの覚悟がある。