<巨人2-7阪神>◇4日◇東京ドーム
これが虎の必殺仕事人だ。阪神の新5番、大山悠輔内野手(30)が、今季初の伝統の一戦で決勝打を放った。同点の3回2死二塁、巨人のエース戸郷から中前に勝ち越し適時打を運んだ。昨オフ国内FA権を行使し、巨人から6年24億円超の大型契約を提示されながら残留の道を選んだ。4番から5番に打順を移し、藤川球児監督(44)から打点増を期待される主砲が、引き分けをはさんだチームの連敗を3で止め、一夜で5割復帰を導いた。
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大山は大はしゃぎするわけでもなく、淡々と打撃用手袋を外した。勝ち越し打を放った直後の一塁ベース上。まるで相手チームへのリスペクトを示すように、静かに喜びをかみしめた。
「もう、とにかく走者を返すだけでした。チャンスになればしっかり走者をかえすのが仕事なので」
1-1の同点で迎えた3回表。少しだけ重苦しい雰囲気が漂っていた。2番中野の左前打と二盗で無死二塁としながら、3番佐藤輝が空振り三振、4番森下は三邪飛。巨人に流れが傾きかねない展開で、ドラ1クリーンアップ最年長が弟分2人を助けた。2死二塁、1ボール2ストライク。巨人戸郷の真ん中高め144キロ直球をセンター返し。ライナーで中前に弾ませ、決勝点をたたき出した
昨オフは国内FA権を行使。宿敵巨人から超大型契約を提示されながら残留した。決め手は金額ではなく愛着、感謝だった。ファン感謝デーで掲げられた無数のレッド大山タオル、選手会納会で裏方からかけられた言葉…。縦じまを脱ぐわけにはいかなかった。
今も忘れられない記憶がある。リーグ優勝、日本一を達成した直後、23年冬の優勝旅行。空港や祝賀会で打撃投手やブルペン捕手ら球団関係者の家族から「ありがとうございました」と次々に声をかけられた。
「僕たちは裏方さんがいてこそ練習できる。裏方さんどころか初対面のご家族からもそんな言葉をかけてもらえて、頑張って良かったと本当に思いました。勝つことに、また違った意味を持てるようになりました」
5年契約の1年目。藤川新監督から直々に「打点にこだわってほしい」と熱く思いを伝えられ、喜んで新たな役割を受け入れた。
「僕が若かった時は、後ろを打っていた福留さんに何度も助けられた。『最後は俺がなんとかするから』みたいな雰囲気があった。次は自分がそういう役割を目指す番なのかなと…」
今季初の巨人戦は3番佐藤輝、4番森下の凡打を帳消しにした。チームの連敗も3で止めて「それが1番です」と力を込めた。
くしくも福留孝介氏もテレビ解説席から見守った一戦。阪神大山悠輔としての生きざまを、敵地のままとなった東京ドームで堂々と示した。【佐井陽介】