中国は“昭和の野球”で強化 日本チームが負ける日も 日本出身選手、スタッフが証言/寺尾で候

下向井総合コーチから光電管センサーを使用した走塁練習の指導を受ける北京タイガース・梁外野手(提供写真)

<寺尾で候>

日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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初夏の沖縄では、真っ青な空に、デイゴの木に咲いた深紅の花が迎えてくれた。今春もプロ野球キャンプで知られた地は「スポーツアイランド」として経済波及効果に貢献した。

最近ではシーズンオフに、高校、大学、社会人、独立リーグから参加して開催される「ジャパンウインターリーグ(JWL)=運営・株式会社ジャパンリーグ」も徐々に注目されてきている。

同リーグは実戦を積みながら、国内外に活躍の場を広げることを主旨としてきた。プロに出場機会を見いだす「トライアウト」、試合を経験する「アドバンス」のコースに分かれる。

第3回目になった昨年11月は、日本を除く13カ国・地域から計143人が参加した。DAZNが全試合映像を配信するなど認知度も高まっているのがうかがえた。

そこで拙者が引きつけられたのは、中国が参加していたことだった。まだまだ大国で野球の浸透度は低いと思っていたが、その様子は少しずつ変わってきているようだ。

中国から参加したチームは「中国希望之星」だった。夏の兆しを感じる沖縄で会ったノンプロ出身で、総合コーチの下向井(したむかい)章利も野球後進国のレベルアップを認めている。

「日本との比較でいえばトップチームにはまだまだ差を感じますが、カテゴリーの下のほうとはいい試合をするだろうし、日本が負けることがあるでしょうね」

現実として23年10月の第19回アジア競技大会で、U-23中国は侍ジャパン社会人代表を1対0で破っている。日本代表監督・石井章夫も中国投手陣の力を称えるほどだった。

JWL期間中に「中国希望之星」を指導した下向井は、監督の李偉(リ・ウェイ)から不調の選手が500本の打ち込みを強制されたことで、ひたすら打ち続ける練習などにも付き合ってきた。

「今は日本の選手だったらやらないでしょうが、中国の選手は手を抜かずに黙って打ち続けるんです。いわゆる“昭和”のイメージですね。でもこれがはまったときは怖いと思ってるんです。中国の人口を考えれば潜在能力の高い選手はたくさんいますからね。このまま強化をはかっていけば、近い将来、日本のトップチームが負かされる日がくるかもしれません」

これまで紆余曲折を繰り返した中国のプロ野球は現在「北京」「天津」「江蘇」「上海」「四川」「広東」「山東」「河南」「福建」の9チームで構成されている。

JWLに参加し、北京タイガースでプレーしている梁培(リャン・ペイ)にもインタビューができた。23年WBC大会第1ラウンドの東京ドームで、戸郷(巨人)から左越え本塁打を放った外野手だ。

東京生まれ、東京育ちで、調布シニアから東海大菅生(東京)に進学して甲子園出場を目指した。17年から北京で野球を続ける梁は戸郷からの一発を「もう過去のことです」と苦笑する。

「あれだけいろんな国の人と野球をしたのはJWTが初めてでした。試合は7回まででしたが、ゲームの中で吸収することは多かったです。中国は日本の社会人とはいい試合をすると思います。ぼく自身は今年で27歳ですが、両国の野球の架け橋になれればと思ってるんです」

中国の選手はNPB、MLBなどの動画をチェックしながら研究しているという。梁は「中国は大きな国ですから、流行り始めたらどこかではじけるかもしれませんね」と見通しも語った。

中国は26年WBC大会の本戦出場を目指したが、すでに3月の予選で敗退している。トップレベルに追いつくには時間がかかるかもしれないが、その急速な歩みには可能性を感じてしまう。(敬称略)【寺尾博和】