<日本生命セ・パ交流戦:巨人2-0楽天>◇7日◇東京ドーム
追悼ムード一色の東京ドームが「長嶋イズム」の連弾に沸いた。0-0の6回2死から、増田陸内野手(24)、丸佳浩外野手(36)の2者連続ソロ本塁打で巨人が試合を決めた。89歳で亡くなった長嶋茂雄終身名誉監督が常に持っていた勝利への熱い気持ち、そして指揮官としての移籍組への心遣い-。巨人に脈々と息づくミスターの遺志が、弔い星に息づいていた。
◇ ◇ ◇
ミスターが大切にした「熱い気持ち」が重い空気を一掃した。6回2死、増田陸が楽天藤平の低めのフォークに合わせた。「行ってくれー!」。願った先の左翼席に白球が飛び込んでいく。「技術も大事ですが、やっぱり相手に向かっていく気持ち、熱い気持ちは大事」。明秀学園日立時代から染み付いた、どんな本塁打でも全力でダイヤモンドを1周する姿。常に燃える若武者が、4号先制ソロで弔い星への先陣を切った。
生まれた00年は、「ON対決」の日本シリーズで列島が興奮に包まれていた頃だった。赤子だった24歳が、熱い気持ちを体現。今季ワーストの19イニング連続無得点を断ち切った一撃に球場が沸騰した直後、丸がさらに熱を上げた。
幼少期の東京ドーム初観戦が、同じ千葉出身でもある長嶋監督が指揮する巨人だった。「続けたかな」。藤平の149キロ直球を強振。2者連続の1号ソロを運んだ先は右翼スタンド。広告塔を35年間担ったセコムの名物看板は「ミスター、感動をありがとう」と感謝のメッセージ仕様に。柱には永久欠番を示す「3」のユニホームも掲げられている「長嶋ゾーン」だった。
開幕前に右太ももを負傷し、リハビリ生活を送った。同じように2軍調整していた21年6月、川崎市のジャイアンツ球場で直接指導を受けた。「あの時に教えていただいたことを、また意識しながら取り組んだ」。感謝の追悼弾だった。
この1発は、球団のFA加入選手では単独最多の766安打目。18年オフ、迷った末に巨人入りを決断した。決め手は長嶋氏の直筆手紙。「一緒に野球ができたらうれしい」と書かれた“恋文”が、この日の恩返しにつながっていた。
試合後、丸はナインの気持ちを代弁するように言った。「今日1つ勝てましたし、僕も1本いい当たりが出た。少しはいいご報告ができる」。ミスターが巨人に残したものは、この日の勝利にもしっかり刻まれていた。【阿部健吾】