西武の鳥越裕介1軍ヘッドコーチ(54)は6日、声を張ってパンフレットを配った。
「いや、まぁ、ちょっとね、はい、まぁ、感動しました」
目が潤んだ。本拠地ベルーナドーム最寄りの西武球場前駅の駅前広場でこの日、「ライオンズピンクリボンキャンペーン2025」の催事が行われた。
乳がんの早期発見、治療、診断の大切を訴える同運動。鳥越ヘッドは08年の夏、ソフトバンク2軍コーチ時代に妻の万美子さんを乳がんで亡くしている。「自分は当時、無知でした」と悔やんでいる。
「女性だけではなく、男性の意識も高めてもらいたいというのはあります」
そんな思いからこれまで在籍したソフトバンク、ロッテに続き、この運動をプロ野球の世界にも働きかけてきた。
啓発にはいろいろな形がある。これまで縁のなかった西武に入団が決まり、早い段階から球団に相談はしていた。2月の南郷キャンプでのこと。
「チームとしてもきっかけになると思うし、選手やライオンズファンや、いろんな人のきっかけにはなると思うので。そしてもし実現してもらえるなら、できれば検診車をお願いしたいって」
告知はもちろん大事だが、最終目的は早期発見により命の危機を救うこと-。この日もマンモグラフィーによる検診を、先着24人の野球ファンに行った。
「以前所属した球団(の同様の催事)で『昨年、これで見つかって助かりました』という方に何人も声をかけていただいて『あぁ、良かったな』という思いもさせてもらったので。新しい球団に来てまだ1年もたっていないですけど、まず第1歩が踏み出せたことに感動しましたね」
がん検診は早期発見につながる。一方で、平穏な日常でいきなり「がん」という2文字の現実を突きつけられる可能性もある。
乳がんに限らず、誰しもが“検診の勇気”を持てるわけでもない。鳥越ヘッドは言う。
「いま乳がんっていうのは日々、いろいろ医療関係の方が頑張ってますんで、早期発見されて早く治療すると命は助かる病気になってきてます。そのことをまず知ってもらって、後回しにするんじゃなくて、怖がらずに安心を。見つかったら見つかったで早いうちに見つかれば全然怖くない病気なので。そういったことも知ってほしいなと思います。あとになって後悔するよりは早く、早く、行ってほしいなと思います」
涙はこぼれなかったが、ずっと潤んでいた。「何年かぶりです。何年かぶりっすね。ちょっと、久しぶりでした。なんか」。囲み取材を終えると「あーあ、泣いちゃった」と91番の背中を見せた。【金子真仁】