<佐井注目>
<阪神2-0広島>◇7日◇甲子園
実は坂本誠志郎、すっかり定着した“聖人キャラ”にやや困惑している。
「マジでやめてほしいっす…。いい人だと思ってくれている人はみんな、僕のことをよく知らないんだなって思っちゃいます」
好結果が出れば必ず投手を立てる。4月の広島戦で頭部死球を受けても「相手は新人投手なので」と激高する藤川監督を止めにかかる。中日ルーキー金丸がエルボガードの装着に手間取っていると、そっと手を差し伸べる。試合後はベンチのゴミを片付ける。もちろん人格者には違いないのだろうが、ただの“聖人”が弱肉強食の世界で生き残れるはずがない。
坂本誠志郎の正体を教えてくれないだろうか-。自己分析をお願いすると、扇の要は「ふふっ」と不敵にほほ笑んだ。
「なんか僕ね…なめられたくないんすよ。年齢とか歴に関係なく、それはずっと思ってきました。なめられないためには結果を出すしかない。なめられたくないから、めちゃくちゃ準備に時間を割くんです」
プロ10年目の31歳。2学年上の梅野隆太郎との併用を経て、1年間フル稼働は今季が初めてになる。8月上旬には1試合2捕逸や4打席連続三振も経験した。「ある時から疲れが全く抜けなくなって」。布団に入っても1時間以上眠れない。それでも「休ませた方が…」との論調には「正直、腹が立ちました」。
「自分で言うのは嫌ですけど、僕…全然試合に出られていない時からずっと剣を研ぎ続けてきた自負はあるので」
梅野の背中がまだ遠かった頃から毎日、人知れず体をいじめ抜いてきた。大先輩、鳥谷敬の晩年に影響を受けたのだという。
「トリさんは試合に出られなくなった時もずっと、出た時と同程度の疲労感を練習で作っていた。それが1年間出続ける体力をキープするためだと教わって、自分もまだ30、40試合しか出られていない時期からポール間を走ったりバッティング練習の量を増やすようになりました。開幕直後なんかは『あと100日以上も走り続けなあかんのか』って心が折れそうな時もありました。でも、いつか1年間出続けるために…と」
9年間、来る日も来る日も剣を研ぎ続け、ようやくつかんだ正捕手の座なのだ。「譲る気はないですよ」と目をギラつかせるのも当然なのかもしれない。
当日の反省に相手打者の研究に…。四六時中、脳をフル回転させる中、最近はナイター後の「アイスタイム」で心身のクールダウンに成功しているらしい。
「寝る前に嫁さんとアイスを食べる瞬間が至福のひとときで。つい何度も冷凍庫を開けては怒られています(笑い)。最近はスイカバーかメロンバー。食べた翌日に勝ったら、また同じものを食べて…」
家に帰れば、最年長が6歳の3児を愛するパパでもある。朝方にソファで寝落ちから目覚めると、ポケットモンスターのぬいぐるみやフィギュアが頭の周りに並べられている。
「負けた後も子供たちの寝顔を見たらいったん全部忘れられるんです」
そして自宅の玄関から飛び出した瞬間、勝負師の仮面を装着する。
昨オフは国内FA権を行使せずに残留。4年契約の1年目は「ぶっちぎりで優勝したかった」という。
「貯金30ぐらいで優勝すれば、さすがに『他球団にケガ人が出ただけやん』とか『ヤクルトの村上くんや巨人の岡本(和)くんがケガしてなかったら分からなかった』とか言われずに済むかなって。それに1回優勝しただけで満足したくない。4連覇するためにタイガースに残ったので」
その闘争心がナインを勇気づけ、猛虎を頂点に導いた。確かに坂本誠志郎を“聖人”の一言で片付けてしまうのは、少しもったいない気がする。【野球デスク=佐井陽介】